「あちらに見えますのが北野天満宮です。ここでは・・・」
ガイドがいかにも『営業スマイル』という顔で京都の御所や寺院などの説明を悠長な京都弁でしている。 これから清水寺へ行くところだ。
前の席の咲は相変わらず俺を無視して隣にいる梨花やその前にいる友達と騒いでいる。
「王様ゲームするぞー!」
レク係の竹林が叫んだ。
正直そんな気分じゃなかった。もう眠って夢の中に逃げ出したい気分だった。
「んじゃぁ、会長、松沢からどうぞ〜!」
・・・よりによってどうして俺を指すのだろう・・・。
俺から順番に丁寧に割られた割り箸を竹林の手から引いていく。
「王様だ〜れ?!」
クラスのほぼ全員が声にだしてお決まりの言葉を言った。
そんなこんなで10分ほどですでに3回ほど回った。
どれもありきたりな男同士のキスだとか、男と女で10秒間抱き合うとかだった。
「んじゃぁ、そろそろ着くから最後ねー。」
「はい、会長!」
「・・・・・。」
俺は相変わらず不機嫌に割り箸を引いた。番号は『12』。
「王様だ〜れ?!」
「おっれぇ〜♪」
俊太郎だった。
「んでは、王様ご命令を!!!」
俊太郎が俺を見て笑った。いやな笑い方・・・。
「27番と・・・12番♪がきっす♪」
このクソ男・・・。
「はーい、27と12は誰かなぁ?」
本気でいやだった・・・。
俺は黙って割り箸をあげた。
「はい、会長!!!当たっちゃいましたねぇ!!!んでは27番は誰かなぁ?」
「・・・はい・・・。」
よく聞き慣れた声の先には誰よりも愛しい女の子が控えめに割り箸をあげている。
「あらららら・・・当たっちゃった♪」
こいつ・・・見たな・・・。
「きちゃいましたね、最後のメインカップル〜!!!!」
バスの中で今までにないくらいの歓声があがった。
これほどまでに俺たちは期待をされていたのだ。 いいんだか悪いんだか・・・。
「キス♪キス♪キス♪」
バス中でキスコールが流れた。
できるのか?
・・・したいけど・・・。
「待って、ホントにするの?」
咲が焦っている。
「当たり前だろ〜、みんなやったもんなぁ!」
「・・・わかったわよ。ただしこのこと絶対ほかのクラスに話さないでよ?!」
「はいはい、王子様が怒っちゃったら大変だもんねぇ!」
もうみんなおもしろがっている。どうしてこのクラスはこんなにノリがいいのだろう・・・。
そしてまたキスコールが始まった。
ここは覚悟を決めるしかない・・・。男だもんなぁ・・・。
俺は咲を目を合わせた。
咲はじーっとこっちを見つめている。
ざわめくバスの中、俺は先の肩に手を置き、もう片方の手を咲の後頭部に当てた。
しかし・・・
顔をあと3cmってところでバスガイドが「はいはーい、到着やで〜。」と気楽にアナウンスをした。
「んだよ〜・・・。」
クラスのやつらは残念そうにバスを降りていった。
と、誰もいなくなった後、俺もバスを降りようとしたが誰かに腕を引っ張られた。
頭の中が真っ白になった。
やわらかくて、温かい唇が俺の唇に合わさった。
目の前の女の子は、咲だった。
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