翌日、雨が降っていた。 私は待ち合わせ場所の映画館へと向かった。
「中宗さん、遅くなってすいません。」 「ううん、俺も今来たところ。」
憂鬱な気分で来てしまった。 私が昨日知ったことは中宗さんには昔彼女が居て二年前に亡くなっていること。 そしてその妹さんは彼を好きだっていうこと。 あるでどっかのドラマにそっくり。 じゃぁ私はフラレ役じゃん…。
「どうかした?嫌なことでもあった?」 「いいえ。何でもないです。それより早く見に行きましょ?」
中宗さんに気をつかわせちゃってるよ。 なんて贅沢な。
「中宗さん…中宗さんには本気で好きになった人とかいるんですか?」 「……いるよ。けどもう居ないけどね。僕はよっぽど苦しめていたんだろうね。 お葬式にも呼ばれなかったよ。」 「そぅ…なんですか。」
間違いない。監督さんの言うとおりで、中宗さんにはまだ割り切れない想いがあるんだ。 だから簡単に女の子と二人で出かけられるんだ…。 好きには絶対なんないから?
「その彼女のこと、聞かせてくれますか?」 「…そうだね、彼女は俺がまだ新人の頃に出会った人なんだ。スタイリストをやって いたんだよ。だから仕事でよく会った。」
それから彼は話し始めた。 最初は全然互いに気なんかなかった。 けどだんだん一緒にいるうちに気持ちが芽生えたんだって。 だから実際には三ヶ月しか付き合ってはなかったけど、 一緒にいる時間は長かった。だからずっと一緒だったようなもんだって。 けどこの恋愛は互いの両親に反対されていて許してはもらえなかった。 結婚も考えてたらしいけどね。 会える時間も減っていったらしくて、ある時急に亡くなったって妹さんから聞いた。 実際に教えられたのはお葬式から10日後なんだって。
私、バカかも。こんなこと知ったって傷つくだけだし。 話聞いてて分かった。今でも気持ちがあるんだって。
「明後日で撮影終りますね。終わったら私たちもう会えないのかな?」 「…そうだね。共演はそうそう無いと思うし…。」 「そんなのどうにでもなるじゃないですか?!…私だけなんですか?」 「若林さん?」 「私、中宗さんが好きです。好きで居てもいいですか?」 「………ごめん。」
聞きたくなかった。 運が悪かったのかな?前の彼女さんに出会う前に出会えてたら…。
「帰ります…。」
なにやってんの私。とどまらせるって決めたじゃん。 好きって伝えたらなにか変わるかもって期待してたの? なんか私ばっかり辛い恋してるのかな…。
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ちょっと寝ただけで朝になってる。 撮影…行きたくないや。サボっちゃおうかな?
「………7:00丁度、撮影始まる頃かな。」 「サボりんぼ。何やってんだよ。」 「創士!…うるさいな。」 「目、はれてる。失恋したか?」
カンが鋭い。
「分かんだろ。俺の気持ち。まぁ今になってって感じだけど…。」 「うん。」
一方的すぎたな、私。
「でも私は違うよ。だって中宗さん嫌いになんないもん。」 「俺だってそうじゃん。」 「…は?創士は私のこと大嫌いじゃん。(私もだけど…」 「バーカ。鈍感女。俺はまだ終わったって思ってねぇから。」
どうゆう意味なの? 終わってないって…あの時創士は怒って…。 『なんで怒ったの?』 ……………まだ好きなの?
「創士…?」 「お前のそんなブサイクな面見たくなかったし、だから決めた。」 「決めたって…何を?」 「あんな男にお前を渡さない。」
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