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ゴーストの法則! 作者:黒木美夜

最終回   いいんじゃない?
 あれから、数週間。
 よく晴れた空に、のどかな小鳥の鳴き声が響く。
 今日も、さわやかな朝だ。
 この私をして、なにかいいことがありそうだ、と期待してしまうくらいに。
 あれ以来、私の体調も万全だし、サトルの姿も最初に会ったころくらいの濃さまで戻った。
 相変わらずの、のんきな幽霊との共同生活は続いている。
 最初は幽霊なんて! って思ってたけど、人間、たいていの事柄には慣れるものね。
 今は、サトルがいなくなったら寂しいんじゃないかと思うまでになってる。
 まさか、自分がこんなことを思うなんて、想像もしてなかったけど。
 結果的には……というか、サトルは最初から私をあの悪霊から守るつもりだったのだろうけれど、まあ……なんにせよ、彼は命の恩人なわけだし。
 ……もっとも、私が彼を文房具で殴るのは……回数は少し減ったけど、なくなってはない。相変わらず、勉強の邪魔はするし、お風呂覗こうとするし。
 おかげで、最近の私は定規標準装備のヘンな人だ。
 体育の着替えまで、覗こうとするんだもんな。
 そのたびに定規振り回して……ああ、今日も体育があったっけ。また変人扱いされる……。
 でもね、最近、幸せそうだって言われた。
 今までの、勉強しなきゃ! ってぴりぴり張りつめたものがなくなったって。今でも勉強至上主義は返上してないんだけど、なんか、心に余裕ができたっていうのかな。自分でも、ちょっとはそういうの、感じてる。
 サトルのおかげ……なんて言ったらますます増長するのは目に見えてるから言わないけど。
 だけど……感謝はしてるの。
 今まで生きてきた中で、一番楽しい(苦労も多いけど)日々をくれたから。

 幽霊なんて信じてなかったけど、いるものはいるんだから。
 幽霊と友達になっても、いいんじゃない?

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Novel Editor