「………………」 神崎隆は重い頭とまぶたを無理に持ち上げた。 薄暗い室内に明滅する小さな無数の光。 まるで、古いSFアニメの宇宙船の中だ。 技術的に荒唐無稽に見えるのは、彼が親しんだものと全く異なる技術体系で作られているからなのか、それとも夢でも見ているからだろうか。 彼が工学部を目指したのは、幼い頃に見た巨大ロボットアニメの影響が多分にあることは自覚している。その影響でこんな夢を見るというのはありそうな話だが。 「……夢じゃ、なさそうだな」 隆はあまり夢を見ない。 ぎりぎりの睡眠時間で生活しているということもある。 それ以前に、体に痛みを感じる。夢の中は痛さを感じないというのが定説だったはず。 そして足下に落ちている金属製の扇。いくら夢だからといっても、他のものと脈略がなさ過ぎる。 「……なんなんだ、ここは」 と口にした時点で、気を失う直前に見たものを思いだす。 突如空間を割って現れた、金属の巨大な固まり。 もちろんただの金属ではなく、巨大な工場だか発電所だかに、アニメの悪役戦艦やモビルスーツに搭載されているような奇怪なパーツをデタラメに組み込んだ、不可思議で理解不能な代物だった。 技術が理解できないという意味では、それも同じだった。 ということは、ここはあれの内部ということだろうか。 不快な金属音が響き、隆はその音源を見た。 蛇のようなアームが何本も、異様な動きを見せている。 何かを持ち上げた。 「……?」 無機物ばかりの中で、それはぐにゃりとした、有機的な雰囲気を放っている。 「人か……?」 力無く垂れ下がっているのは腕のようだ。 「おい!」 大声で呼びかけてみる。 返事はない。 「……!」 ないはずだ。 腹や胸に灼けた跡がある。 あれは、致命傷だ。 あの機械は死体の始末をしているのだ。 「………………」 なんなんだ、ここは。 戦慄が隆をねっとりと包み込む。 ここは、理解できない。 理解できないことは恐怖を生む。ましてや、目の前に死体があるのだから。 「……!」 人影の頭がぐらりと傾いた。 今まで隠れていた顔が顕わになる。 「!」 それは、自分と同じ顔をしていた。
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