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乙女色 〜心の詩〜 作者:音姫沙耶

第29回   生命。
血は耐えなく流れ、

人は騒ぎ、

本人は眠り、


この世界はなんて残酷なのだろう。


人が死んでいれば、「かわいそう」

かわいそう?

何が?

自殺って言う贅沢な事をしていても?

かわいそうじゃない。

頑張ったって言うべきじゃないの?



答えはないの?



もうだめだ。


終わりね。


目の前には見慣れない天井。


生きてたの?

かみそりで傷をつけた左手にはガーゼ。



起き上がると看護師さんが居た。

「良かったね!生きてた!奇跡的だって。」

生きてたから?

あまり喜べない。

ただ、自立を出来ると言う喜びだけがわかった。


聞いてしまった。

「椎名は?生きていますか?」

看護師さんは笑って、「生きていますよ!」

嬉しいわけじゃないのにホッとした。


諦める。

諦める。

自立

自立

その文字をただ、無限に頭の中で繰り返す。

そのことで椎名を忘れそうだから。


いっそのこと、記憶喪失になればよかった。


全ての思い出をかき消せるのだから。


病院を退院すると琴ちゃんが居た。


「退院おめでと!学園にもどろ?」

もどろ?

なんで?

手紙の内容知っているでしょう?

「さようなら。」




笑顔で手を振りまた、がむしゃらに走り出した。




どんっ。

ぶつかった。


「すいません」

棒読みの言葉を発するとまた走ろうとした。

腕・・・。腕をつかまれた。

この顔・・・。



椎名だ。

「帰るぞ!!」


「嫌。帰らない」


頑張るの。

“自立”を成し遂げるの。




さようならをするの。


「さようならをするの。だからよ」


椎名の力はこの言葉によってなくなった。

そのすきを見て走った。


ついた先は東京。

北海道とは大違いだ。


これから。

これからここで暮らす。



帰りはしない。

そう決めた

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Novel Editor by BS CGI Rental
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