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乙女色 〜心の詩〜 作者:音姫沙耶

第26回   夢と現実。
真っ暗で、暑苦しい中で、夢を見た。



真っ赤に燃える炎があたしを追いかけていた。


逃げようとする。


逃げれない。


足が動かない。

涙があふれる。

まるで・・・。


まるで、椎名を失ったかのように。


だけど、あたしは前を向き、動かない足を立たせ走り出した。


光の見える・・・。

光の見える場所へと。


風を切り。


その時・・・。

その時強く心に思ったんだ。


『椎名を失う現実は見たくない』

おかしいよね。

まだ失ったわけではないのにー・・・。

目が覚めた。

まだ皆がいる。

夜中?朝方?

そんな事をぽわわぁと考えていた。


椎名は・・・。

いない。


心配に思ったのに、体が重すぎて動けなくなった。

椎名は・・・。


絶対に帰ってくる。

ぼろ糞になっても帰ってくる。

絶対に。


また浅い眠りについた。


また目が覚めた。


おそらく朝であろう。

暑苦しい小さな部屋から出ると、椎名が寝ていた。

沙耶>「椎名?起きて?」

椎名>「疲れた・・・。寝させて」

夜中まで戦っていたのかな?傷の消毒をしようか。

椎名はまた眠りについた。



あの頃みたい・・・。

小5の時の椎名とあまり変わらないね。

いつだろう。君に恋した日は。


宿泊研修?学芸会?・・・わからない。


そんな事すら忘れさせてしまうほど幸せだったんだね。


地域参観日だ。

どきん。って来たんだよね。二人で水かけをしていて。

その頃は噂で琴ちゃんが好きで・・・。


鉛筆をもらって、ねり消しをあげて・・・。

それから・・・。それから・・・。

涙があふれた。

そんな思い出がたくさんあったんだね。

椎名の頬に一滴落ちた。

とても新鮮な音を立てた。



あぁ。あんな事もあった。

琴ちゃんと友情が崩れかけた事。

デートをしたこと。


幸せだったね。


一つ困難があっても椎名がいてくれたから強くなった。


・・・さようなら。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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