真っ暗で、暑苦しい中で、夢を見た。
真っ赤に燃える炎があたしを追いかけていた。
逃げようとする。
逃げれない。
足が動かない。
涙があふれる。
まるで・・・。
まるで、椎名を失ったかのように。
だけど、あたしは前を向き、動かない足を立たせ走り出した。
光の見える・・・。
光の見える場所へと。
風を切り。
その時・・・。
その時強く心に思ったんだ。
『椎名を失う現実は見たくない』
おかしいよね。
まだ失ったわけではないのにー・・・。
目が覚めた。
まだ皆がいる。
夜中?朝方?
そんな事をぽわわぁと考えていた。
椎名は・・・。
いない。
心配に思ったのに、体が重すぎて動けなくなった。
椎名は・・・。
絶対に帰ってくる。
ぼろ糞になっても帰ってくる。
絶対に。
また浅い眠りについた。
また目が覚めた。
おそらく朝であろう。
暑苦しい小さな部屋から出ると、椎名が寝ていた。
沙耶>「椎名?起きて?」
椎名>「疲れた・・・。寝させて」
夜中まで戦っていたのかな?傷の消毒をしようか。
椎名はまた眠りについた。
あの頃みたい・・・。
小5の時の椎名とあまり変わらないね。
いつだろう。君に恋した日は。
宿泊研修?学芸会?・・・わからない。
そんな事すら忘れさせてしまうほど幸せだったんだね。
地域参観日だ。
どきん。って来たんだよね。二人で水かけをしていて。
その頃は噂で琴ちゃんが好きで・・・。
鉛筆をもらって、ねり消しをあげて・・・。
それから・・・。それから・・・。
涙があふれた。
そんな思い出がたくさんあったんだね。
椎名の頬に一滴落ちた。
とても新鮮な音を立てた。
あぁ。あんな事もあった。
琴ちゃんと友情が崩れかけた事。
デートをしたこと。
幸せだったね。
一つ困難があっても椎名がいてくれたから強くなった。
・・・さようなら。
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