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先生との恋 作者:kei

第7回   7.わがまま
7.わがまま

先生と私は9月から水曜日は毎週会話するようになった。
私が部活に一人でいる金曜日も、書道室に出没するようになった。

先生の気持ちが本当なのかよくわからない。
廊下であっても目もあわせないし。
2重人格なのかな。

自分が速水先生を好きなのかどうかもわからない。
好きになってはいけない人だと思う。
そばに誰か来ると、ドキドキするのは、誰でもそうだし、
人と話をするときはいつも緊張する。

でも、先生と二人きりで話すとき、緊張しなくなっていた。
家族と一緒にいるときみたいに話せる。
あまり近くにこられるのは、心臓によくないけど。

10月になって、文化祭のための作品を作るので
水曜日以外は毎日、放課後になると書道教室へ行った。
書道部の活動は、基本的には自由で
いつ来てもいい。
人数も少ないから、部員と顔をあわせることはあんまりないけど
今の時期はみんな真面目に来る。

「ミジンコ先輩、速水先生と仲がいいって、図書委員の友達から聞いたんですけど、ホントですか?」
1年生の後輩から聞かれた。
私のあだ名は、身体が小さいせいでミジンコと中学時代から呼ばれている。
中学の友だちは高校になっても、そう呼ぶので、今は知り合いのほとんどからそう呼ばれている。

「仲がいいって、そんなわけないでしょ」
あっちが勝手に付きまとっていると、言いたいところだけど
それは自意識過剰かと思ってやめた。

1年生にしたら、自分たちが習っている先生であこがれているんだろうな。
私も自分の学年の先生として出会ったら、カッコイイなと思うだろう。
最初はそう思ったんだし。
でも、実際はセクハラ親父だ。
みんな、2重人格だと知らないから、あこがれてるんだろう。

そのあとも、その子から、図書室に毎週来るんですかとか
きっと、その図書委員の友達から聞いているだろうに
しつこく聞かれた。
この、書道室にも時々来ることを知ったら
もっと真面目に練習するかなと考えながら、彼女と話をしていた。



課題を作り終えて、帰ろうと昇降口のところで靴を履き替えていると
「みーなーちゃん」
とまた先生は私の後ろに忍び寄ってきていた。

「なんですか?」
「つれないなぁ。もう帰るの?」
「はい。今日は、邪魔されることが少なかったので、課題が終わりました」
「少なかったって、俺以外に、みなちゃんに言い寄ってくる悪い輩がいるのか?」
「やからって、いつの時代の人ですか」
「いや、それはおいといて、誰かに言い寄られてる?」
「イエイエ、そんな変わり者は先生だけです。その先生のせいで、後輩から先生のことを聞かれて時間がかかっただけです」
「俺の事って、何か言われたの?みなちゃんをいじめるやつがいれば、俺が成敗してやるから」
「成敗って、ほんとに先生は忍者とか戦国時代の人かもね」
「だから、服部半蔵の末裔なんだって」
「わかりました。先生、私にあまり話しかけないでください。変なうわさが立てば、私も先生も困るんですよ」
「俺はぜんぜん、困らない。でも、みなちゃんが困るって言うなら、控えるけど。だけど、ちゃんと人がいないかどうか確かめてから話しかけてるんだけど」
「じゃあ、図書室に来ないでください」
「えー、せっかくの癒しの水曜日を!」
「何なんですか、癒しの水曜日って…」
「そのままだよ。1週間の疲れを取るために、水曜日は思う存分、みなちゃんを見るために図書室に行ってるのに」

「…」何も言い返せない。なんていったらいいのか思いつかないよ。

「じゃあ、図書室には行かないから、数学準備室に週に1回は来てくれないかな」
「どうして行かなきゃいけないんですか」
「みなちゃんは俺のオアシスだから」
「訳がわかりません」
「みなちゃんを困らせるようなこと、しちゃっていい?このまま抱っこして校内を歩き回るとか」
「やめてください」
「じゃ、来てよ」
「子どもじゃないんだから、わがまま言わないでください」
「子どもだもん」
「だもんとか、そんな大きな身体に似合いません」
「来てくれよー暴れるぞー」

先生は、絶対2重人格者だ。
みんなの前と、私の前とでは態度が違いすぎる。

「で、どうする?このまま抱っこして逃走しようか?」
「いやです」
「じゃ、毎週、金曜日の4時に来て」
「どうして時間指定までされるんですか」
「俺の都合」
「勝手すぎます」
「好きな子の前では我侭になっちゃうもんなの」

私は、抱っこで歩き回られるよりましだと思って
結局了承した。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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