■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

先生との恋 作者:kei

第5回   5.接近
5.接近

私が書道部の課題を放課後にしていた時のこと

一人でいるはずの書道教室に人の気配が
振り向くと速水先生がいた。
いつものスーツ姿ではなく、バスケ部のジャージで。

「先生、忍者みたい。気配を隠して忍び寄ってきて」
「ばれたか、俺は服部半蔵の子孫なのだ」
「馬鹿みたい…」
先生は、私の真後ろまで来て、背中から覆いかぶさってきた
「なんなんですか」
「俺が指導してあげようかと思って。先生が右手を持って書いてくれることあるだろ」
「先生は、書道じゃなく、数学の先生でしょ」
「そうだけど、ここの卒業生だし、書道を選択してたから大丈夫」と
訳のわかんない理屈を言って、私の右手を上から握ってきた。

「やめてください。セクハラです」
「なんだとー山田先生は同じことしてもセクハラじゃないのか」
山田先生とは、書道の先生で70歳のおじいちゃんである。
「速水先生、重たいです。山田先生は体重までかけてきません」
「この思いは、気持ちなんだ、受け取ってくれ」
「思い違いです」
「みなちゃん、いい匂いするね」
「へ?」
先生は、私の首元に顔を持ってきた。
くすぐったい。
これ以上、この状態が続くと、恥ずかしさで倒れそうだ。
それに、誰かに見られたらどうするんだろ。
「先生、こんなところ、誰かに見られたらクビですよ」
「別にかまわない。みなちゃんと一緒なら、仕事など何をしてもいい」
ホントにこの人はおかしいんじゃないだろうか。

そうやって、言い合っているときに、先生の携帯が鳴った。
先生は、仕方ないなーとつぶやきながら
私から離れてくれた。
「はい」(めっちゃ不機嫌な声)
「はい、今から行きます」
先生は、少し話しをしてから電話を切った。

「みなちゃん、あまり遅くまで残ってたら危ないから、そろそろ帰りなさい」
「はい。でも、先生が邪魔したから課題が出来なかった」
「ごめんね。お詫びに抱きしめてあげ…」
言い終わらないうちに接近してきたので
私は教室の端まで逃げた。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections