45.告白
先生はうちに来て、家族と挨拶したあと、私と出かけたいと言った。 母は一緒に晩御飯を食べたいから、それまでに帰ってきてねと見送ってくれた。
助手席に座って、先生の顔を見た。 久しぶりにじっと見たかも。 かっこいい。 こんなにカッコイイ人が私を好きだなんて、不思議。 今は、もう私のこと好きじゃないかもしれないけれど。
「みー、穴が開いちゃうかも」 「へ?」 「そんなに見つめられたら、穴が開くかもよ」 先生は冗談みたいに言った。 「すみません」 恥ずかしくなって、うつむいた。
図書館の近くの大きな公園に来た。 3月になったけれど、まだまだ寒い。 駐車場に車を止めて、車の中で話をした。
「みー、卒業おめでとう」 「ありがとうございます」 「さ、これで先生と生徒じゃなくなったね」 「はい」 そう返事をしてから、先生も黙っちゃったし、私も何を話していいかわからなくなった。 先生と生徒じゃなくなったっていうのは、赤の他人になったって先生は言いたいのかな。 なんだか泣きたい気持ちになる。 ここで泣いたら、この前みたいに先生はもう何も話してくれなくなるかも。
今、ここで私の気持ちを伝えなかったら、一生、後悔する。
『行動あるのみ』
向井君の言葉を思い出した。
「先生。私、先生のことが好きです」
沈黙が続く… 私の言ったこと、聞いてた? 先生の顔を見た。 先生は、私と目が合うとにっこり笑った。
「俺の勝ち」
先生はにんまりしながら言った。
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