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先生との恋 作者:kei

第43回   43.卒業式
43.卒業式


とうとう卒業式になってしまった。
結局、先生と話せていない。
メールを送っても返事も来ない。
行動を取りたくても、会えないと何も出来ない。

先生、何を考えているの?
私は先生のこと卒業できないみたい…



卒業式は、昨日の予行の時のほうが泣きそうになったくらいで、あっさり終わった。
式には、なんと家族全員が来ていて、それが恥ずかしくて感傷にひたれなかったのだ。

兄たちは「制服姿のみーと写真を撮りたい」と有給まで取ったらしい。
本当に、なんだか情けないような気持ちになる。

「みー、好きな人に第2ボタンをもらいに行かないのか?」
と上の兄に聞かれた。
だって、先生は制服じゃないし…スーツのボタンをもらうとか?

そういえば、式に先生が出てたけど、お母さんたちに気づかれてない??
端のほうに座ってたから、気づいてないかな。

「そろそろ、会社に行ったら? お母さんたちも先に帰ってていいよ」
先生と家族が鉢合わせてはいけないと思って焦りだした。
「今日は有給取ったからいいんだよ。せっかくだから一緒に帰ろう。友だちと話があるなら待ってあげるから」
兄たちは言うことを聞いてくれない。
「そうだ、俺も先生にあいさつに行こう。職員室に行こうか、千尋」と上の兄は、下の兄を誘って歩き出した。
「ダメ、ダメ」私は焦って、兄の手を引いた。
「何だよ、みー。お前も一緒に行くのか」
兄にぶら下げられるような形になって、一緒に職員室へ行くことになってしまった。
母たちは「先に帰ってご馳走作っておくね!」と帰ってしまった。


どうしよう。先生と話をしたいけど、お兄ちゃんと会ってしまうのも困るし。
考える暇もなく、引きづられるようにして職員室へ入る。
職員室には、他にも挨拶をしに来た生徒や保護者がたくさんいた。
よかった。速水先生はいない。
兄たちは、ラグビー部の顧問の先生に挨拶しに行った。
私は「ちょっと、行くところがあるから」と言って兄たちと別れた。


数学準備室に行ってみると、誰もいなかった。
速水先生の机はすっきり片付いていた。
私は手帳を破ってメモを書いておいた。
メモを書くときに、先生と交換した銀色のペンを使った。
ペンを祈るような気持ちで握り締めて、先生と話が出来ますようにと祈った。


『速水先生へ
 どうしても先生と話がしたいです。
 電話をしてください。
 お願いします。 扇原みな』






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Novel Editor by BS CGI Rental
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