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先生との恋 作者:kei

第41回   41.もてない理由
41.もてない理由


先生のこと好きって、言わなくっちゃと思うのに言葉が出ない。
卒業したらもう、会えなくなるの?

私は泣き続けたままだったので、先生は「今日はもう帰るね」と言い残して帰ってしまった。
母は一緒にご飯を食べましょうって、誘っていたみたいだけれど、それも断って帰っていった。

夜になって、先生に電話したけれど、留守番電話だった。
私と話したくないってことかな。

次の日、学校へ行ってから先生を探すけど、すれ違いばかりで会えない。
メールを書こうと思っても、何を書いていいかわからなかった。




学校はあと1週間で卒業式なので、受験の終わった子は結構来ていた。
みんな思い出作りしようって、学食や色んな教室で写真を撮ったりしている。
話をしたことのない違うクラスの男の子から、一緒に写真に写って欲しいと頼まれた。

「ミジンコ、高校生活で結局彼氏できなかったね」
写真を撮ったあと、クラスの女の子に言われた。
「どうしたの? 急に?」
「だってさ、入学式のときにミジンコを見て、この子はもてそうだって思ってたから」
「もてないよー」
そんなこと言われたのは初めてだった。
側にいた男の子が
「ミジンコがもてない理由知ってる」と言い出した。
「え?」
「なに?なに?」
私と彼女の声がかぶった。
「お兄さんたちの圧力。ラグビー部の後輩たちにミジンコに近づきそうな人間がいたら、報告しろって言ってたから。お前に怖いお兄さんがいるっていうのは一部の男子の間で有名だからな」

びっくりしすぎて声も出ない。
上の兄は12、下の兄は8才も年上で、卒業してから何年もたっているのに。
そういえば話している男の子、斉藤君はラグビー部だ。

女の子、宮川さんもあっけにとられている。
「お兄さんいるの?」
「うん。でも年が離れてるから、卒業してずいぶんたつんだけど」
「OB戦の時に、いつも来てるよ。その時にいつも俺たちにお前の様子を聞いてるから」
知らなかった。年に何回か実家に帰ってくるけど、学校の話なんてしたことない。

宮川さんが
「でもさ、向井君のことは? 付き合ってるって噂あったじゃない」と聞いた。
そういえば、そうだ。向井君からは告白されたけど、兄たちから何も聞かれていない。
女子バスケ部の妨害にあったけど。
「あいつバスケ部だから、そこまで干渉できないから。でも付き合ってるのかって聞きに行ったよ。お兄さんたちには報告していないし」
「斉藤君が?」
「いや、俺じゃないけど」

二人が話しているのをぼんやり聞いていた。
お兄ちゃんたち、先生の言うようにシスコンだよね。
でも、先生のことを何も言われなかったなぁ。
先生とお兄ちゃん、何を話してたのかな。いまさら気になってもしょうがないか。

「ミジンコはさ、好きな人いないの? 今の奴みたいに、一緒に写真を撮って記念においておくようなさ」
ボーっとしていた私に斉藤君が聞いた。
「え? いるといえば、いるかも」
「えー! 好きな人いるの?」
宮川さんが驚いている。
「ミジンコは見た目が人形みたいだから、中身もお子様だと思ってた」
何気に失礼なこと言われた気がする。

斉藤君は「お兄さんたちには言わないから、教えてよ。誰?」と聞いてきた。
「いやだよ。誰にも言いたくない」
そう言って、私は二人から逃げた。




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Novel Editor by BS CGI Rental
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