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先生との恋 作者:kei

第39回   39.ドラジェ
39.ドラジェ


どうして?

頭の中はそればかり。
いつもはインターホンを鳴らして家に入るのに、自分で鍵をあけて家に入る。
玄関には、見たことのある革靴が置いてあった。

「ただいま」
そう言って、リビングのドアを開けて中をのぞいた。
「お帰り。合格おめでとう」
先生がソファー立ち上がってそういった。

「どうして、うちにいるの?」

「みーに電話しても繋がらなかったから、心配して来てくれたのよ」
母はそう言いながら、先生にお茶の用意をしていた。
ポケットの中の携帯を見ると、電池が切れていた。
「あ、電池切れてる…」

「みー、速水さんがケーキをお土産に持ってきてくださったから、手を洗ってきなさい」
「お母さん、ケーキの前に、あかずきんちゃんと話していいですか」
先生はふざけたような言い方をしながら、私に近づいてきて、フードを取った。
お母さんも笑って「どうぞ、部屋までケーキを運びますから2階へ上がってください」
と言っていた。

先生は、私が手を洗う間も側にいて一緒に私の部屋に来た。
「みーは着替えないの?」
「先生が側にいるのに、そんな危険なことしません」
「手伝ってあげようと思ったのに」

こうしていると、以前の様に話せているのが不思議な感じがした。
少し、ドキドキしてるけど。

「改めて、合格おめでとう」ピンクのミニバラの花束を先生はくれた。
「ありがとうございます」そう言って受け取って、花を見つめた。
「きれいだけど、可愛い」とつぶやくと
「みーみたいだ、と思って買ったんだ」
恥ずかしい…
先生、恥ずかしいこと平気で言えますね。
うつむいていると
「みー、こっち向いてよ。まともに顔を見れたの何日ぶりだと思ってるのかな」
先生は、私のあごをクイっと持ち上げた。
「うわ、やめてください」

先生の手を振り払って、睨みつけた。
「そんな怖い顔して、でも、怖くないよ」
そう言って、私の頭を撫でてくる。
「先生、からかわないでください」
「だって、おもしろいから」

話している間に、母がケーキを持ってきた。
先生とケーキを食べながら、受験のこと、合格発表のことを話した。
ご両親のこと、聞きたいけれど、聞いてはいけない気がした。

「そうだ、もう一個あった」
先生は突然そう言って、ポケットから小さな包みを出した。
「なんですか?」
「開けてみて」
袋を開けると、ドラジェが入っていた。
「バレンタインにみーにあげようと思ってたんだよ。だからあの時に、おいでって言ったのに」
「すみません」
申し訳ない気持ちになった。
「私、バレンタインって忘れてて… チョコレートも持ってきてなかったし」
「みー、僕にチョコレートあげたかったの? 今からでもいいよ」
先生は嬉しそうにしている。
なんだか、先生に負けたような気がした。
「ちがいます! 先生にチョコレートあげたいなんて思ってません!」

どうして、心と違う言葉が出ちゃうんだろう…



※ドラジェ:アーモンドを砂糖で包んだお菓子。結婚の内祝い、出産祝いにヨーロッパで贈られる。
手にした人は幸福が訪れると言われている。また、アーモンドは不滅の愛の象徴とされている。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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