38.心でわかった
ぼんやりとした気持ちのまま、家へ帰る道を歩いていた。 卒業式まで、あと1週間ほど。 明日は先生に会えるかなぁ。
先生に会っても、何を話していいのかわからない。 ご両親の事も。 先生が家族になりたいってお願いしたの、寂しかったからなのかな。
朝はいいお天気だったのに、どんよりと曇って今にも雨が降り出しそう。 空を見上げて思う。 私もうれしいことがあったのに、この空のような気分。 そう考えていると、雨ではなく雪が降ってきた。
コートについているフードをかぶった。 以前、その姿を先生が見て、「あかずきん」みたいだと言ったなぁ。 日常の物事一つ一つが、いつのまにか先生に結びつく。
恋ってどんなものか、なんだかわかってきた気がする。 苦しいけれど、好きな人のこと考えるとうれしくなるって言ってたけど、今の私はそんな気持ち。 心って複雑なもので、考え出すといやになることも多いけれど、楽しいこともたくさんある。 頭じゃなくて、心でわかったよ。
今はどこにいるのかわからないけれど、先生に心で話しかけてた。 以前の私なら、バカらしい行動だと思うけれど 今はこうして、心の中で話しかけることが幸せに感じる。
先生に、好きって言ったらびっくりするかな? 悔しい気もする。 好きって気持ちより、先生のことを心配な気持ちのほうが強いから話がしたいなぁ。
家の前までつくと、先生の車が止まっていた。
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