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先生との恋 作者:kei

第37回   37.好きなのかな
37.好きなのかな

速水先生は色んなお話をしてくれたけど、家族の話はほとんどしなかった。
だから、先生のご両親が亡くなっていることを知らなかった。
呆然としてしまい、言葉も出ない。

そのあと、少し話をして中野先生へ挨拶をして、部屋から出た。

先生に電話が通じなかったのは外国に行ってたから。
今もそうなのかな。
ぼんやり歩いていると、曲がり角で人にぶつかった。

「すみません」
「扇原」
向井君だった。
「あ、久しぶり」
前は会うのがいやだったのに、すんなり言葉が出た。

「合格したんだって? おめでとう」
「あ、ありがとう。誰に聞いたの?」
「扇原と同じクラスの奴が、担任に聞いたって」
「そう」
「合格したわりには、あんまり幸せそうな顔してないな」
「そう?」
「あぁ、元気ないよ。最近ずっと」

向井君は大きな身体をかがめて、私をのぞきこんだ。
「そうかな。寒いから、風邪気味なんだよ」
私は、なんだか気まずくなって一歩後ろに下がった。

「扇原、避けないで。もう、付き合ってとか言わないから」
向井君は、困ったような悲しそうな顔してる。
「ごめんね」
「いや、謝るのは俺のほう。気持ちを押し付けてごめん」
「ううん、私もきつい事を言ったと思う」

廊下の端でするような話じゃないな、そう言って向井君は笑った。
その笑顔に慰められた気がして、私もつられて笑った。


「扇原、本気で速水先生の事を好きなんだな」
向井君にそういわれて、顔が熱くなった。
「顔、赤いぞ」
からかわれたけど、どうにもならない。
返事も出来なくて、うつむいてしまう。
「ごめん、からかって」
向井君はそう言って、私の頭にポンポンと手を乗せてから
「じゃ、俺行くから」と歩いていってしまった。


私、先生の事を好きなのかな?
だから、こんなに苦しいんだよね。
先生、早く会いたいよ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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