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先生との恋 作者:kei

第34回   34.会いたいけど、会いたくない
34.会いたいけど、会いたくない

帰ろうとしたとき、携帯が鳴った。
画面を見ると、『忍者の末裔』つまり、速水先生の事。

「はい」
『せっかく学校に来たのに、俺には顔を見せてくれないの?』
「え?」
『上見て』

見上げると、4階の準備室から先生が覗いてた。
『こっちにおいでよ』
「いえ、もう帰るところなんです」
私は先生のほうに背中を向けて歩きながら話した。
『そんなこと言うと、追いかけて抱っこしちゃうけど、いい?』
「追いつく前に、走って逃げます」
『俺、走るの早いよ』
「でも4階からじゃ、無理ですよ」

先生に会いたかったけど、会いたくない。
複雑な気持ちで、自分の心をもてあましてる感じ。

『みー、すごく会いたい』
その声を聞いたら、心拍数が急に上がってきて顔が熱くなるのを感じた。
足も止まってしまった。

「先生、ずるい。私が困ることをわかってそんなことばっかり言って」
『ずるくないよ、素直な気持ちを言ってるだけ』
「でも、私が困ってることも、わかってるでしょう?」
『うん、みーのことなら、何でもわかるから』
「じゃあ、もう帰らせてください」
『いやだ』
「また、わがまま言ってる」
『好きな女の子にはわがまま言いたくなるって、言っただろ』

話している間も、全力疾走しているみたいに心臓がドキドキしている。
4階を見上げて、先生の顔を見たい。でも、見たくない。
もう、自分の心が自分のものではないような、どうにも出来ない気持ちになってた。

「先生、私ね、今、どうしていいかわからないの。先生に会いたいんだけど、会いたくないの」
『会いたいんなら、来てよ』
「だけど、会いたくないの」


あぁ、これが好きって気持ちなのかも。
自分の心がコントロールできない。
今なら、まだこうして冷静な部分も残ってる。

大丈夫。
先生との電話を切れば、落ち着ける。

「先生、ごめんなさい」とそう言って電話を切った。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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