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先生との恋 作者:kei

第3回   3.運命の人
3.運命の人

先生は私の通う高校に今年新任で来たそうだ。
そして、図書室に来て私のことを知ったと言っていた。

「みなちゃんのこと、1学期は毎週見に来てたよ。最初は毎日来てたけど、水曜日の放課後が当番ってわかってからは狙ってきたから。」
なんだか、狙ってという言葉が恐ろしい。
先生は、ストーカーなのだろうか?

結局、片付けも手伝ってくれた先生は、図書準備室に入ってきて
私がパソコンで、本の管理をするのを隣で座って見つめながら話をしている。
いつも一緒に担当している、ほかの委員は図書室のカウンターにいるから
今準備室にいるのは私たちだけ。
先生は、ここに入るとき、「パソコンの調子が悪いらしいから見に来た」とか言ったようだ。

「あの、先生は私に何の用があるんでしょう?」
「わからないの?」
「はい」
「鈍いんだね。そりゃそうか、毎週来てたのに、気づかないくらいだし」
そういわれても、私は本には興味があっても生身の人間には、興味より、恐怖を感じてしまうくらいなのだ。
見ている分にはいいけれど、異性に関わると、恐ろしい気がする。
周りの友達には、遅れているとか、お子様だとか言われるけれど、性格だから仕方ない。
「はっきり言っておくね。みなちゃんは鈍いから」
鈍い、鈍いとしつこい人だ。
先生と話をすると、ドキドキしていたけれど、だんだん慣れてきた。
「初めて君を見たときから、ああ、この人が運命の人だって思ったんだよ」
「は?」
「言ってること、わからないの?」
「はい、わかりません」
先生は、頭を抱えている。
かっこいい人は、どんなポーズを取っていてもカッコイイのだなと
ぼんやり思った。
大体、運命の人って何なの?
対決とか、決闘とかそういうものを先生とするのかな?

「あのね、わかりやすく言うと、一目ぼれしたんだよ」
ひとめぼれ、そんな名前のお米があったなあ。
「みなちゃん、聞いてる?」
「はい。私はコシヒカリが一番だと」
「鈍いだけじゃなく、ボケてもいるんだ」
「え?」
「僕はね、みなちゃんをはじめて見たときに、なんてかわいい人なんだ、って心の底というか、本能で感じたんだよ」
もう、先生の言っている言葉が日本語には聞こえなくなってきた。
私は身体がここにあっても、頭の中はトリップしているんじゃないだろうか。
こんなかっこいい人に、しかも先生に告白されているなんて、どこかにカメラでも仕込んであるんじゃないだろうか。

「みなちゃん、おーい、聞いてるのか?」
先生が私の頭をポンと優しくたたいた。
はっと、気がついて
「あの、今日はエイプリルフールではないし、コレはドッキリか何かでしょうか?」
なるべく、冷静になろうと自分に言い聞かせた。
今まで、誰にも告白されたことなどないのだ。
いつも小さいとか、幼稚園児だとか、からかわれる対象の私なのだから。

「みなちゃん、俺は本気なんだよ」
先生は、僕から俺に言い方が代わっていた。
私の肩を掴んで、自分のほうに向けて私の目をじっと見ている。
座っていても、目線が上なので、先生は背中を曲げているなぁと
また、私は関係ないことばかり考え始めていた。
とにかく、この先生の冗談を終わらせないととんでもないかも。

「先生、冗談はやめてください。私は小心者の一般市民なので、これ以上何かいわれると心臓が持ちません」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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