■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

先生との恋 作者:kei

第28回   28.戸惑い
28.戸惑い

自分の中で答えを決めると
モヤモヤした気持ちがなくなってすっきりした。

でも、先生を好きだというのではない
一緒にいたいとは思うけど。

やっぱり、「好き」って気持ちがよくわからない。
それを考えると、また悩みそうだけど
とにかく、向井君の事に答えを出せたから
それからは勉強もはかどったし、終業式が憂鬱だとかは思わなかった。


終業式の日は、寒かったけれど天気はとてもよくて
気持ちのよい朝だった。
駅から学校まで歩いていると、向井君から声をかけられた。
「おっす」
「おはよう」
「今日、一緒に帰りたかったんだけどクラブの奴らと昼飯食べに行く事になったんだ」
「そう」
じゃあ、返事はどうしたらいいのかな?
もう、聞かなくてもいいとか?
都合のいい事を考えていると

「この前言ってた、返事なんだけどさ、今日の夜に会えないかな?」
予想に反する事を言われて、戸惑ってしまった。
「え? 夜って?」
「一緒に晩飯食べに行かないか?」

そんな事を急に言われても。
「ごめんね。家族と約束があるから」
ホントはないけど、ウソをついてしまった。

「そっか。でも、ちょっと会える時間ないかな?渡したいものがあるんだ」
どうしたらいいんだろう。
私の計画では、終業式が終わったら返事をしてそれですっきりするはずだったのに。

「向井君、返事は今するよ」
このまま押し切られてはいけないと感じて、向井君に言った。
「え、いや、それは困る」
向井君も戸惑っているみたい。
そうして話している内に学校についてしまった。
周りに人も増えてきたので、これ以上は話も出来ないと思った。

「じゃ、お昼食べに行く前に話をしようね」
私はそう言って、自分の教室に入った。


終業式が終わって、体育館から教室まで歩いているとき
速水先生を見かけた。
1年生の女の子たちから
「先生、彼女いるの?」
「クリスマスはどうするの?」
などと、質問されていた。

怖い顔してるのに、よく話しかけるよねと
私の隣を歩いている友だちが話してた。
友だちから、私は速水先生を好きなんじゃないかと言われた事があったけど
私が余り反応しなかったので、それからは何も言われていない。
向井君とのことも、噂になった事があっても
ミジンコは恋愛と程遠いと言われたし。

その通りだなぁ。
恋愛って、なんなのかわかる日が来るんだろうか。


教室に戻って、ホームルームが終わるとすぐに隣の教室へ行った。
向井君が逃げちゃうんじゃないかと心配になったからだ。

「向井君!」
私が呼びかけると、数人の女の子からじっと見られた。
気にしない。気にしない。自分に言い聞かせる。
「おう。今行く」
向井君が廊下に出てきてくれた。
「ここじゃなんだし、バスケ部の部室に行こうか」
そう言って、歩き出した。


部室は鍵が開いていたけれど、誰もいなかった。
「あのね、返事なんだけど」
「聞きたくないって、言ったらどうする?」
「そんな…」
向井君は、今までと違う態度になった気がする。
「俺さ、この前はかっこつけたこと言ったけど、やっぱり扇原の事あきらめられない」
「でも、でも、私、別な人が好きなの」
「速水先生だろ」
え、なんで? やっぱり私はわかりやすいんだろうか?
「どうして」
「どうしてって、この前、先生に慰められてた時にわかった」
あの時、私は向井君の前では先生と何も話していないのに。

「でも、先生を好きでもそれは無理な話だろ。だったら、俺と付き合うほうが扇原は幸せになれるよ」

予想外の展開に私の頭はついていけない。
向井君は、別な人が好きならあきらめるって言ったのに。
迷惑だって、言わなきゃいけないんだろうか。
付き合うって、いうけど、私は別に誰とも付き合いたくない。
向井君にも、先生に相談したみたいに素直な気持ちを全部話すべきなんだろうか。

考えがまとまらなくて、私はずっと黙り込んでしまった。

「扇原、俺の事を嫌いじゃないんだろ。だったら、付き合ってみて。そのうちに好きになるかもしれないだろ」

向井君は、バスケットをしている時のようにどんどん責めてくる。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections