27.わかりやすい
「先生、何してるんですか」 私はびっくりして、涙も止まった。 「みーがうれしいこと言ってくれるから、つい抱きしめちゃった」 ついって、そう言いながら、先生は私の身体を放してくれない。 「先生、離れてください」 「えー!せっかく二人の気持ちが通じ合ったんだから」 「通じ合ったのとは、少し違うと思うんですけど」 私は先生の身体を押して何とか離れた。
先生も座りなおして、私のほうを見る。 「みー、でも今のは10人中10人が告白だと思うような事を言ったんだよ」 「そうですか?私、先生の事好きだとか一言も言ってません」 「頑固だなぁ」
さっき、言った事って気の迷いかも。 でも、先生とこうして話をしているのは、とても楽しいし。 素直な気持ちを言ったのだけど、それが好きって事なのかなぁ。
「みー、考え込んでるね。ま、素直に好きって言ってくれるまで気長に待ちますよ」 先生はニヤニヤしながら私の顔を見る。 こっちも意地になってきたので 「私が先生を好きなんて言いません」と言い返した。
それでも、先生はご機嫌で 「いいよ。その分、俺がみーを好きって何回でも言うから」 なんて言ってる。 こういう軽いところがイマイチ信用できない。
「先生。向井君にはやっぱりちゃんと言います。期待させるような行動は彼だけじゃなく、彼を好きな女の子まで傷つけるってわかったから」 「そうだね」 「でも、なんて言おう…」 「速水先生が好きだからって言えば」 「そんな事言いたくない!」 先生は、私が必死に言ってる姿を見て笑ってた。
考えてみれば、向井君は私に好きな人が出来たら、あきらめるって言ったわけだから、先生を好きって言ったらあきらめるんだよね。 誰か他の男の子なら、私が好きだなんて言えば噂になって相手も困るだろうけど、先生なら別に困らないかな。 先生を好きでも報われない恋だと思うし。
「決めた!」 私が張り切って大声を出したので、先生は少し驚いたようだった。 でも、すぐに 「俺の事を好きだって、向井に言うんだろ」 とまた私の考えを読まれてしまった。
「私って、そんなにわかりやすいですか?」 「うん。みーの事は何でもわかるよ」
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