26.気持ち
先生は、前に図書館であった後に家の近くまで送ってくれたから 私の家を知ってたんだ。
私は、ドアロックをはずして、門のところまで行った。 「先生、来てくれたんだ」 「うん、やっぱり心配になったから。みーが寂しがってるって気がしたから」 先生と玄関まで歩いた。 「みー家族の方は?」 「今はみんな買い物に出かけてるんです」 「じゃ、お邪魔したらまずいな。外で話そう」
私は家に戻って着替えてから「速水さんと出かけてくる」というメモを残した。 先日、先生が朝から電話をかけてきた時からお母さんには 速水先生のことを知られてしまっている。 でも、お母さんは速水と言う人が先生だと思ってなくて、同じ学校の生徒だと思っている。
先生の車に乗って、目的地の特にないドライブをした。 先生は運転しながら、私の話を黙って聞いてくれた。
私は、今日あった事や、人を好きになるのは苦しいことなんじゃないかとか 思いつくまま話した。
大きな公園の駐車場に着いた。
先生は私を車の中で待つようにと言って、どこかへ行った。 しばらくするとコンビニの袋を持って帰ってきた。
肉まん、サンドイッチ、温かい紅茶、冷たいお茶、チョコレート、ガム 色んなものが入ってる。
「みー、何も食べてないんでしょ?食べられるもの、食べたらいいから」 先生も、そう言いながら温かい紅茶を飲んでいた。
私はそれまで食欲がなかったけど、話をしてすっきりしたのかおなかが空いてきて、先生と半分こしながらいろいろ食べた。 先生と一緒に食べるのって、楽しい。
食べ終わると先生が話し出した。 「人を好きになるって、苦しいよ確かに。今まで、本気で好きになったことなかったから、俺にもわからなかったけど、みーのこと考えると苦しくなる。でも、みーのこと考えると幸せにもなる。向井の気持ち、よくわかるよ。好きじゃなくても、嫌いじゃないんなら、側にいさせてほしいと思う」
先生の真剣な気持ち、久しぶりに聞いたら、また締め付けられるような感じになった。 前に告白を何度もされたけど、その時は冗談ばっかりと思っていたのに。
「でも、向井も俺も結局、みーのこと苦しめて、気持を押し付けてるだけだよな。迷惑かけてごめん」 先生が素直に謝るなんて、似合わないよ。 冷血な先生か、ふざけている先生しか知らないのに。 今の先生は? 一人の人間?
「みー、向井に返事をしてやれ。みーが苦しいなら、きちんとその気持を伝えてやらないと。俺は、みーの気持がわかったから、これからはもう、みーの事かまわない」
「そんなのやだ」 自然と口から出ていた。
「私、先生の事を好きかどうかわからないけど、こうやって気持ちを聞いてもらいたい。先生にあいたいって思う。寂しいとき、側にいてほしいし、うれしかったときも聞いてほしいし、私の知らないこと、教えてほしいし、これからもずっと一緒にいたいよ」
いつの間にか涙があふれていた。 スカートを握り締めていた自分のこぶしに涙が落ちてきた。
先生が私を抱き寄せた。
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