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先生との恋 作者:kei

第25回   25.側にいてほしい
25.側にいてほしい

学校から帰ると、家に誰もいなかった。
うちは両親と母方の祖父母の5人家族。
兄が二人いるけど、二人とも就職して今は別で暮らしている。

いつもなら、祖父母と母がにいるのに、みんなで買い物に行ったのかな?

お昼ご飯は、用意されていた。
お昼ご飯とともに、テーブルにメモがあった。

「みー、テストお疲れ様! 新しいショッピングモールが今日、開店したので行って来るね!」と書いてあった。
買い物好きな母と祖母にせがまれて、祖父が同行したんだろうな。

食欲も出なくて、自分の部屋に戻った。
するとすぐ、1階から電話の音がした。
再び、リビングへ降りて、電話をとった。

「はい」
『みー?』
「先生? 今、学校でしょう?」
『うん。でも心配で。もう家に帰ったころかなと思って電話したんだ』
「ありがとうございます」

先生の声、聞いていると胸の辺りが暖かくなった。

『みー、大丈夫? 今から行こうか?』
先生は、何も言わなくても私の気持ちがこんなにわかってしまうんだ。
不思議だなぁ。
今、側にいてほしいって思ったんだよ。
思ったことは言えずに、
「大丈夫です。寝不足だから、今から寝ます」
って返事した。

『テストだったもんな。俺も今から採点と部活も見に行かなきゃいけないんだった』
先生は明るい声で言った。
『じゃ、おやすみ。また夜に電話するから』

そう言って、電話を切った。

本当は、先生にすごくあいたかった。
寂しくて、さっき会ったいろんなこと、聞いてもらいたかった。
先生のこと思ったら心は温かいけど、何かに締め付けられるみたいに苦しくなった。

ベッドに戻って眠るつもりが考え込んでばかりで、涙が止まらなかった。
人を好きになることで、誰かを傷つけるなら、誰も好きにならないほうがいい。
でも、向井君は私に好きな人が出来るまであきらめないって言った。
誰かの心に入り込むような気持ちが人を好きになる気持ちなんだろうか。
私は、誰にも心の中まで入ってきてほしくないよ。



しかし、いつの間にか眠ってしまったみたいだった。
あぁ、制服しわくちゃになったよ。
そんなこと思いながら起き上がったとき、玄関のチャイムが鳴った。

お母さんたちかな?
階段を下りて、インターホンについている小型テレビの画面を見た。

信じられない。
先生、ホントに来ちゃった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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