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先生との恋 作者:kei

第2回   2.きっかけ
2.きっかけ

私は図書委員をしている。
2学期が始まって、いつものように図書室で本の整理をしていた。

あの靴屋さんのときのような出来事がまた再現されて、
先生と学校で出会ったのだ。

私は背伸びをして、本を片付けようとしていた。
ちゃんと踏み台が用意されているのだけど、
なんだか取りに行くのが面倒で、
何とか上の段に本を片付けていた。
その時に、本がうまく入らなくて、
3冊くらい本が上から降ってきた。
「うわっ」と声を出してしゃがんだ。
しかし、私の頭には本がぶつからなかった。
「あれ?」立ち上がって、振り返ると
男の人が本を持って立っていた。
「ちゃんと、踏み台に乗って片付けないと危ないよ」
スーツ姿のその人は、そう言いながら、本を渡してくれた。

「あ」私は声が出て、固まってしまった。
1ヶ月くらい前に靴屋さんであった人だ。
あの時はジーンズ姿で、大学生くらいだと思ってた。
でも、スーツだということは先生?なのかな。

「どうしたの?」
彼は固まってしまった私を心配して声をかけてくれた。
「あ、あの靴屋さんで」
「そう、覚えてた?」
「はい。先生だったのですね」カチコチになってしゃべった気がする。
「うん、もしかして知らなかった?僕のこと」
「は、はい。すみません」
「そっか、だからあの時」とそこで彼は話すのをやめてしまって、
何か考えてるみたいだった。
独り言なのかな。

「速見祐(はやみたすく)です。この高校の数学教師で男子バスケットボール部の顧問。1年生の担当です。」と手を出して挨拶してきた。
握手しようって事?
私は、手を出して握手した。
「あ、あの扇原みなです。3年2組で、図書委員で、書道部です。」いっぱい、いっぱいになって自己紹介をした。
手を離そうとしても、先生はぎゅっと私の右手を掴んでいる。

「みなちゃん、って呼んでいい?」
「え」
「だめかな?」
そんなこと急に言われても、先生から下の名前で呼ばれるのってヘンだよ。
そりゃ、書道の先生はおじいちゃんだから、『おみな』なんて変な呼びかたしても仕方ないと思うけど、こんなカッコイイ先生から呼ばれたら、なんだか恥ずかしい。

「いいよね、みなちゃん」
先生は強引な気がする。手も離してくれないし。
「は、はい。あの、手を」
「あ、そうか。いやーちっちゃくてカワイイ手だから、離したくないと思ってさ」
そう言いながらも、手を離してくれた。
いったい何分くらい握手してたんだろ。

今、図書室には、ほとんど人がいなくて
私と先生の周りにも誰もいないけど
こんなところみられたら、大変なんじゃないかな。

「みなちゃん、本片付けるの手伝おうか?」
「いえ、大丈夫です。仕事ですから。先生も仕事に戻ってください」
ドキドキするから、これ以上話していたくなかった。
「冷たいなぁ。せっかく話せたのに。靴屋さんであったときも、こっちはすごくうれしかったんだよ」

へ???
なんで、私のこと、先生は知ってたんだろう?

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Novel Editor by BS CGI Rental
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