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先生との恋 作者:kei

第18回   18.試合を見た
18.試合を見た

11月23日木曜日

私は模試を受けに行った帰りに、学校へ行ってみた。
先生から「うちの学校で試合がある」と電話で聞いていたので
少しのぞいて見ようと思ったから。

体育館の側まで行くと、すごい歓声が聞こえてきた。

バスケットボールのルールなんて、「トラベリング」くらいしかわからない。
試合を見ても意味がわかるかな?

体育館に入るとすごい熱気だった。
とりあえず、2階に上った。
観客席はないけれど、2階から体育館を見ることが出来るので
たくさんの生徒が見に来ていて、応援していた。

遠くに先生が見えた。
すごく厳しい顔をして、何か叫んでいた。
声がかすれているみたい。
うちの高校が3点リードしていて、残り時間は2分だった。

バスケットの試合をこんなに真剣に見たことがなかった。
勝ってほしいという気持ちで、祈るように見た。

それから、15点リードして、試合は終了した。
周りのみんなもワーッと喜んでいて、私も拍手した。

スポーツを見るのって、応援するのって
こんなに楽しいことなんだ。
先生と知り合って、いろいろ教えてもらった。
こんな気持ちになれることも。

試合の興奮が私にもうつったみたいで
いつもなら、冷静でいられるはずなのに、先生に「おめでとう」って言いたくなった。
私は数学準備室の前まで行って、先生が戻ってくるのを待った。



「みなちゃん」
先生は驚いたような様子で声をかけてきた。
「こんにちは」
「どうしたの? 今日は模試だったんでしょ?」
「はい。終わってから、試合を見にきたんです。おめでとうございます」
「ありがとう。ま、中に入ってよ」

久しぶりの数学準備室。
中は特に変わっていなかった。
ストーブが置いてあるけど、消えていた。

「寒くない?」
「大丈夫です。試合、とってもよかったです。見ていてホントにドキドキしました」
「そう。みなちゃんが見ているときに勝って、よかったよ」

先生はコーヒーを入れてくれて
試合について解説してくれた。
ほとんどスポーツをしないので、始めはいちいち、言葉の意味も聞いてしまったけれど、先生は面倒がらずに意味を教えてくれたし、わかりやすい解説をしてくれた。


今まで、興味のない世界だったけれど
実際に試合を見てみるととても面白かった。
先生にも、
「先生と知り合って、色んなこと知ったし、自分の中の感情も変わったような気がする」と話すと
「よかった。コレで俺のことを好きになればもっといいんだけど」と
ニコニコして話してくれた。

好きって気持ちはわからないけど、
先生のこと1番近くにいる人って気がすると思ったけど、それは口には出さなかった。


帰りに先生が
「明日、何の日か知ってる?」と聞いた。
「はい、先生の誕生日でしょ」
「うん。だから特別にココへ来てって、今晩電話しようと思ってたんだ。でも、今日来てくれたし。どうしようか?」
「今日は学校が休みで、人が少ないけど、明日は他の人も先生の誕生日って知ってるから、ココには来づらいです」
「そうか。誕生日を祝ってほしかったなぁ」
先生のワガママお子様モードのスイッチが入ったようだ。
「そういわれても明日は無理です」
「じゃ、土曜日にデートしようか?」
「はあ??」
デートって、先生はホントに何を考えているのかわからない発言をするときがある。
「土曜日は、部活ないから」
「そういわれても、先生とデートなんかしたら、先生も職を失うし、私も退学になっちゃいます!」
「真面目だなぁ、みなちゃんは」
先生が不真面目すぎるんだ!と心の叫びはしまいこんで
「とにかく困ります」と言った。

「そっかぁ。みなちゃんは俺の誕生日を祝ってくれないんだ」
お子様は、今度は落ち込んでしまった。
「お祝いをしないというわけではありません。おめでとうという気持ちは明日の夜に電話で伝えようと思っていました」

落ち込んでしまった先生はその言葉を聞いても
「言葉だけでお祝いじゃなくて、身体で愛情表現してほしい」
とかブツブツ言ってる…
何気にセクハラ発言?

それは、聞かなかったことにした。
「じゃ明日、チョコレートケーキを焼いて先生の机に置きに行きますから。きっと他の子もプレゼントを持ってくると思うので、私がそれを置いても目立たないと思います」

私の言葉に先生は立ち直ったようだ。
「やったー!みなちゃんの手作りケーキ! 出来れば二人きりで食べたいし、みなちゃんに『あーん』って食べさせてもらいたい!」
先生は2度目のセクハラ発言をしながら喜んでいた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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