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先生との恋 作者:kei

第16回   16.頭で恋愛は出来ない
16.頭で恋愛は出来ない

「もしもし、速水先生ですか?扇原です。」

『みなちゃん、どうしたの?』

「悩みを聞いてくれませんか?」

『いいよ。何でも話して』

私は、向井君から告白されたけれど、人を好きになるということが、やはりわからない。
これから、自分はどんな風に行動したらいいのか。
というようなことを支離滅裂になりながら話した。
先生は、時々相槌を打ちながら、じっくりと聞いてくれた。
いつものようなふざけた感じは、一切感じられなかった。

『みなちゃんはどうしたい?』

「どうしたいって、胸がモヤモヤした感じがいやなんだと思います。それをすっきりさせたい」

『向井と付き合いたい?』

「付き合うってことがよくわかってないし、向井君のこと好きだけど、それは友達として好きなんです。先生のこともそうだと思う」

『素直なお返事でヨロシイ。人を好きになるってことを頭で理解しようとするから、みなちゃんは苦しんでいるんだと思うよ。やっぱり、今までの恋もほんとの恋じゃなく、憧れだったんだろうね。ホントに誰かを好きになったら、自分の心の暴走を止められなくなるから、きっとわかるよ。冷静なみなちゃんもモヤモヤじゃ済ませられないような気持ちになるから』

先生の言葉をかみ締めるように聞いた。
また、頭で理解しようとしてる。
でも、頭以外、どこで理解するの?
恋愛って、頭でするんじゃなく、心でするものかな?
図書館司書じゃなく、心理学者でも目指そうかな。

先生と電話中なのに、私は考え込んでしまった。

『みなちゃん、自分の世界に入ってるでしょ? 俺との電話が終わってからにしてね』

「あ、すみません」

『いいよ。こうやって、みなちゃんの素直な気持ちを聞けるのもうれしい。これから先、みなちゃんが俺以外の人を選んだとしても、見守っていきたいって気持ちになったよ。こんな保護者気分じゃ、相手にされないかな』

「そんな。でも、こうして誰かに相談をするって、気持ちが軽くなりますね」

今まで、誰にも相談できなかった自分の性格などを話した。
その間も先生は、じっくり聞いてくれた。

『今は、みなちゃんの相談相手になれたことだけで幸せを感じるよ。いつか俺と同じラインにたってほしいって思うけどね』

今日の電話は1時間を越えてしまった。
途中で、先生は電話代がかかるからといって、かけなおしてくれた。
そういう気遣いって大人だなぁと思う。

恋愛のことわかってなかったり、気遣いが出来なかったり
つくづく自分は子どもなんだと思い知らされて
最近の私は落ち込みがちだ。


先生と電話を終えて
私は結局、答えは出なかったけれど
「人を好きになる」ことを頭で理解しようとしないで
自分の心というのが動かされるまで待ってみようと思った。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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