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先生との恋 作者:kei

第14回   14.モテ時期
14.モテ時期

人は誰しも、モテる時期があるのだと
クラスの子が話しているのを聞いた。
「私は5歳のときだったかも!そんな小さいときにモテても、意味ないよ」
なんて、話していた。

私の17年の人生で、モテた時期なんてない。
告白?されたのも先生が初めてだ。
先生の場合、からかってるように思えるし。


そんな私のモテ時期がいよいよ来たんじゃないかと思える事件が起こった。

水曜日、いつものように図書室のカウンターに座っていた。
「よ!」
声をかけられて、上を向くと向井君だった。
「珍しいね。図書室に来るなんて」
彼は、バスケットで大学進学を決めたぐらい、勉強をしない人なのだ。
だから、図書室で彼に会ったことはない。
「勉強しに来たんじゃなくて、本読みに来たんだよ」
「そう。じゃ、受験勉強してる人の邪魔にならないようにね。向井君、いるだけで邪魔になりそうだけど」
彼は、速水先生と同じか、もっと大きいかも。
大きさで圧倒される感じ。

「そうですねーミジンコみたいに小さいと、コンパクトでいいんだけど」
向井君は笑いながら、本の棚のほうへ行った。


私の隣に座っていた1年の図書委員の子が話しかけてきた。
「ミジンコ先輩、向井先輩と仲良いんですか?」
「うん、まあ去年同じクラスだったし」
「速水先生が図書室に来なくなったと思ったら、今度は向井先輩なんて、やりますねーミジンコ先輩も!」

彼女は、なんでそんなこと言うんだろ?
そういえば、速水先生に来ないでって言ったら、ホントに図書室に来なくなったなぁ。
金曜日には、数学準備室で会ってるけど。
向井君と速水先生、同じクラブだけど、なんか他に関係あったかな?
まさか、速水先生が私を偵察に行け!とか向井君に指示してる?
そんなわけないか。

5時になり、図書室閉館の時刻になった。
向井君は、何の本を読んでいたのか、最後まで図書室にいた。
やはり、偵察??
向井君まで、忍者の末裔とか言い出したりしないよね。


後片付けも終わり、鍵を閉めていると、
「ミジンコ、一緒に帰ろうか」
向井君が出て行ったと思ったのに、また戻ってきた。
彼は、バスケットが得意なせいか、大きいせいなのかモテるみたいで
さっきの後輩が「いいですねー先輩」と
私にこそっと話した。

去年も文化祭のころは一緒によく帰ったので
別に断る理由もないし
「いいよー、鍵を職員室に返しに行くから、昇降口で待っててよ」
と返事した。
だけど、向井君は職員室にもついてきた。

職員室には、5,6人の先生がいて速水先生もいた。
なんだか、見られてる気がする。
鍵を返して、職員室から出るときに気になって
速水先生のほうを見たら、
目が合った。
怖い…いつものニヤけた顔じゃなく、冷血王子の顔で
私たちのほうを見てた。
向井君は、背中を向けていたから気づかなかったみたい。


学校からの帰り道、向井君は私のかばんを持ってくれた。
そういえば、去年も文化祭の準備で残ったとき
帰りはいつもかばんを持ってくれたっけ。
私が小さいことが不憫だとか言って。

「去年の今頃も、こうやって一緒に帰ったねぇ」
「そうだな」
いつもはおしゃべりの向井君が、急に無口になった。

「どうしたの?」
「ん?」
「なんか、気分でも悪い?カバン、自分で持つよ」
「いや、大丈夫。ミジンコ真面目だから、教科書をロッカーにおいたりしてないんだろ、カバン重いよ」
「ごめん、やっぱり自分で持つ」
「いや、違うって、重いもの持つと、大きくなれないぞ。だから、一緒にいるときは代わりに持ってやるから」

駅のほうへ行くつもりが、
向井君が、「ちょっとこっち」と言って
公園のほうに来た。
「ミジンコって、ブランコとか似合うよな」
カバンを置いて、向井君はブランコを漕ぎ出した。
なんだか、大きい人がブランコを漕ぐと
壊れそうな気がする…

「どうしたの?向井君。受験も終わったのに、悩みでもあるの?」
「まあね。ミジンコの悩みはやっぱり、受験?」
「そうだねぇ。図書館司書にもなりたいし、書道科のある大学にも行きたいし、とりあえず、どっちも受けてみるけど」
「そっか。地方も受けたりするのか?」
「ううん、地元だけ。一人暮らしは親が許してくれないから。向井君は地方の大学に行くんだね」

「そう。ここから新幹線で2時間くらいかかるよ」
「遠いねー他のみんなもそうやって離れちゃうんだね」
なんだか、しみじみとした気持ちになった。
向井君の悩みは、遠くへ行っちゃうことなのかもしれないなぁ。

「遠く離れても、友達とのつながりって、切れないと思うよ」
慰めたくて、何とか言葉を探した。
「そうだな。でも、会えなくて寂しいと思う相手もいるんだ」

あ、そうか、好きな女の子がいるんだ!
私に相談しても、何か助けになるようなこと出来るかな?
「もしかして向井君、好きな女の子がいるの?その子と離れるのが寂しいの?」

向井君は、顔が真っ赤になってしまった。
まずいこと聞いちゃったみたい。
「ごめんね、変なこと言って。暗くなってきたから、帰らなきゃ」
ごまかしたみたいで、悪いけど、カバンを持って立ち上がった。

「扇原、待って」
向井君は、ブランコから降りて、私の前に立った。
いつもはミジンコなのに、なんで苗字で呼ぶの?
「何?」
「俺、確かに好きな奴がいて、その子と離れるのが寂しいんだ」
「そう」
「それで、その好きな奴っていうのが……
扇原なんだよ」

エー!!
声にならない声というか、口だけ大きく開いたまま、
私は固まった。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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