12.胸を焦がすような
「先生、聞きたいことがあります」 「何?みなちゃんの質問なら、何でも答えるよ!」
先生は、とてもうれしそう。 しかし、私の質問は先生を怒らせるかも。 そんな予感がした。
「どうして私にかまうんですか」 私が聞いたとたんに、先生はムッとした。 やっぱり。予感的中。
「みなちゃん、最初に言ったと思うけど、俺にとってはみなちゃんは運命の女性なの」 「何なんですか、運命の女性って」 「みなちゃんを見たとき、『キター』って思ったよ。今まで、一目ぼれなんてしたことないけど、本能でわかったって感じかなぁ」 先生は、ニヤニヤしながら、話している。 しかし私には理解不可能。 何なのよ、キターって。
「みなちゃん、まさかいないと思うけど、好きな男いる?」 「その、まさかって何ですか。いませんけど」 「よかった。でも、『速水先生です』って言ってほしいけど、とにかく、誰か好きになったことはあるでしょ?」 「そりゃ、まあ」 「悔しいけど、高校3年にもなれば仕方ないか。それで、その時に胸が熱くなるというか、ドキドキしたでしょ、その男を見て」 「うーん、そうでもないかも。あんな風になりたいって思って見てた」 「えー、それって、恋じゃないよ。憧れなんじゃないの?恋って胸を焦がすような思いって言うだろ、映画とか小説でも」
中学の時に好きだと思ってた男の子、胸はドキドキしなかったし、熱くもならなかった。 やはり、恋ではなかったのか。
「でも、その人を見ているの楽しかったです。それが好きってことじゃないの?」 「テレビ見てても楽しいでしょ?それは恋じゃない」 先生に言われて、納得した。
誰かを見て、ドキドキするのって…
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