11.マニアックなかわいさって?
土曜日の学校は運動部の人ばかりだ。 普段はいない私がいると 珍しいのか、友だちに声をかけられた。
「ミジンコ、忘れ物?」 バスケットボール部の向井君だ。 去年同じクラスだった。 今は隣のクラス。 確か、もう推薦が決まったとか言ってたのを誰かに聞いた。 だから、まだ部活に出ているのかな。 「ううん、図書室で勉強しようと思って」 「へー小さいのに偉いね!」 仲のいい友だちはみんな、私が小さいことをネタにする。 152センチあるのに、顔が童顔なせいか、もっと小さく見えるらしい。 「小さいのは関係ないよ」 「そう?ミジンコが図書館で勉強してたら、みんなが小さい子が高校の図書室にいる!ってびっくりするんじゃないの?」
去年、文化祭の実行委員でいっしょに働いたので その時から、よく話すようになった。 最近は、あまり話していなかったので お互いの近況というか、向井君の進路について話した。
「向井ー1年が探してるぞ」 振り向くと、速水先生だった。 「はい、行きます」 向井君は、私の頭をなでて(友だちみんなによくそうされる) 「じゃ!がんばって」と声をかけてくれた。 「はーい。じゃあねー」
向井君に手を振っているのを じっと速水先生が見ていることに気がついた。 「こんにちは」 「あぁ、みなちゃん、なんであんな奴に頭さわられてるの」 先生は、私に近づいてきた。 「あんな奴って、友だちです。それに、私が小さいせいか、あんなふうに頭をなでられることはよくあるんです」 「なんてことだ。みなちゃんのかわいさは、マニアックなものだと思ったけど、万人受けしていたのか」 なんだか、失礼なことを言われた気がする。
「しかし、お昼から来るとおもったのに、朝から来たんだね」 「はい。図書室で勉強しようと思ったから」 「そう。じゃ、俺の部活が終わるまで図書室にいて、12時半に準備室に来て」 「わかりました」
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