夏は暑い。みんな知っていることだ。 汗が流れ落ちるのを見た。それは僕の好きな女の子。 「何?」 ハンカチを差し出した。彼女が怪訝そうな顔で僕を見る。きっと嫌いなのだろう。 僕も自分のことが嫌いだ。性格は暗い、優柔不断、友達は少ない、何より顔が不細工だ。 でも彼女に関しては友達になれたらと頑張っていた。 「使って」 「いらない」 なんて気の強い子なんだろう。僕は彼女のどこが気に入ってしまったのか…好きになったきっかけを忘れてしまった。 僕は彼女が…好き?いや、どうなんだろう。ただ、意地になっているだけのような気がする。じゃあ、そうなったきっかけはなんだったのか。 あれ?僕は彼女と付き合ってる?? 「ねぇ」 「何よ」 かなり不機嫌な返事。 「僕たち、恋人???」 彼女の顔色が一気に変わった。僕は質問に後悔した。そんな訳がないだろう。 「ばか!?」 呆れた彼女は僕に3度の平手打ち。 「…痛い。ごめん、変なこと言って」 「信じらんない。2度とそんなこと言うな!」 そう言った彼女は僕に背を向け歩き出した。 「え、え?ちょっと待って!!」 僕の呼び止めにくるりと振り返り、更に悪化した機嫌の彼女。 「まだ何かある!?」 「いや〜、こ、これは何???」 暑い夏、汗が噴き出す。湿っぽい僕の手を力強く握る彼女の小さな手。僕は夢を見ているのだろうか。 「いい加減にしてよ〜。彼女と手を繋ぐのが嫌な訳?」 彼女は僕の彼女…なんだ。なんでそんな大事なことを忘れちゃうのだ?なんで?なんで……
「ねぇ、いい加減にしてくれないかな」 彼女の低いトーンの声が僕に囁く。 「あ、ご、ごめん」 慌てて差し出したハンカチを引っ込めた。また、やってしまった。 少しざわつく大学の講義室。隣に座る彼女を僕は知らない。偶然、隣に座った彼女を使って…大好きな妄想に浸っていた。 「今日のはなかなかの出来だな」 にやける僕に彼女が一瞥。僕って…変?
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