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私と彼は恋人じゃない。 作者:桜田霞

第4回   初めての告白
そして、高校二年の夏。私にとって衝撃的な事件が起きた。
 ある晴れた日だった。終礼が鳴り、みんながいなくなると、私以外誰もいない教室に、足音が響いてきた。荷物をまとめ、帰ろうとしている私を、出入り口に立っている男性が止める。生徒会長でもあり、野球部の部長でもある神岡先輩がそこにいた。
「どうしたんですか?」
 私が聞くと、先輩は黙って教室に入ってきた。
 神岡先輩は、リーダータイプの人でみんなに平等に優しい。硬派な性格だから、結構もてるみたい。外見はぱっちり二重で少し女顔かもしれない。野球部なので、体格はイイ方だ。先輩とは、今年の春、新入生歓迎会でお手伝いをした時に出会った。先輩と私はその時は結構仲良くしゃべっていたが、その歓迎会が終わると、全くもって会わなくなってしまったのだ。
「お久しぶりですね」
 私が言うと、向こうは思い出したように“久しぶり”と言ってきた。
「水野さん。少し時間ある?」

 その夜。家に戻ると、すぐにベッドに横たわった。天井を見つめ、呆然としていると、ふと神岡先輩の言葉が脳裏によぎった。
「好きだ…か」
 まさか告白されるとは思わなかった。今まで告白された事がなかったので、受け答えもできなかった。ただ黙って神岡先輩の言葉を聞くだけ。先輩は、返事は今度でいいって言ったけど、私にはわからなかった。自分がどうすればいいのかさえ。
 その思考を中断させたのは、携帯の音だった。音に気づき、携帯を取ると、村井君からメールが来ていた。
「村井君」
 村井君にこの事相談してみようかな。
この時、一番仲のいい子は村井君しかいなかったし、女友達に言うのは、なぜか抵抗があった。自分が告白されたことを、自慢しているみたいで嫌だった。
 村井君に相談メールを送ると、それと同時に電話がかかってきた。
「もしもし水野さん? 相談って何?」
 少し抵抗はあったが、先輩から告白された事を素直に言う。
 村井君の答えは意外とあっさりしてた。
“難しく考えなくてもいいんだよ。水野さんが思うように行動をしてみたら?”
 なんだか経験者みたいな諭し方だった。そういえば、村井君は誰かと付き合っているのだろうか。思えば、彼の事ぜんぜん知らない。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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