■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

王女パヨピヨ愉快な仲間達 GROW UP〜王家の指輪〜  作者:桜田霞

第9回   大ピンチ!
パチパチ…。
まるで花火が小さくなる音のようだ。さっきから焚き火の音が気になって、なかなか眠りにつけないあたし。
焚き火の方に体を向けると、コルクが焚き火の向こうで遠くを見つめていた。その顔が火に照らされて、オレンジ色の肌に見える。
あたしが起きてる事に気づいてない様子かな?
「コルク〜。まだ起きてるの?」
あたしが声をかけると、コルクは慌てて周りを見た。
「目の前にいるじゃん」
焚き火越しにいるっていうのに気づかないなんてな…。
「ああ。すまない。見えなかったよ」
「失礼な。それってあたしが小さいってこと?」
「いやいや。そーいう意味じゃないよ」
あたしは布団から出ると、コルクと向かい合わせになる。
「なんで寝ないの?? 魔法陣張ってるから大丈夫だよ」
「騎士たるもの、敵に隙を見せてはならない」
そう言うと、コルクは笑う。
この人なんか能天気っていうかなんていうか…。
「パヨピヨこそ、眠れないのか?」
「うん〜。ちょっと眠れないかな」
コルクは側に置いてあったココアを、あたしに差し出してくれた。
「ありがと」
「少しお話しないか? 眠くなったら言ってくれ」
 あたしはココアのカップを持ちながら、コルクの顔を見る。
「…コルクって騎士なんだよね?」
「そうだけど?」
「騎士って辛いの?」
 なんかこの質問って変だよね…。
「辛いさ。斬りたくもない相手を斬ってしまうのが辛いかな…」
「斬りたくもない相手って?」
「そうだな…生き物すべてかな。私と姉さんは、一時期、ある豪邸のボディーガードをしてたんだ。資金を集めるためにやってた事なんだけどね。そこで襲ってくる暗殺者とかを排除するのが私達の仕事だった」
「暗殺者って人間だよね?」
 あたしが聞くと、コルクは静かに頷く。
「でも、私達もお金を貰っている以上は、やらなきゃいけないだろ? 一度それで弱音を吐いたことがあったけど、姉さんにしかられた」
コルクはそう言うと、少し頭をかく。
「そっか…。でもあたしコルクの気持ちわかるよ…」
 誰でも思う事は一緒なんだ。それかあたし達だけなんだろうか…。でも生きている物を殺すのって怖いよね…。
少しの間、沈黙が続き、焚き火の音がパチパチとなる。
「私が旅に出ている理由言ってなかったな。パヨピヨは、カインって言う騎士を知ってるかい?」
んん! どっかで聞いたことあるようなぁ。どこだっけな。
あたしは少ない脳を振る回転させる。
「んー。聞いたことあるかも」
カイン…カイン…。あ! 思い出した。オーラム城の謁見室にある。国の危機を救ったという、おっさんだ!
「国の危機を救った伝説の勇者のおっさんでしょ? ちょっと顔はゴツイかったかな。勇者っていうより平凡なおっさんだったけど」
あたしが思い出したように言うと、コルクは笑い出した。
「それ、私の父親だ」
「っぶううううう」
飲んでいたココアを思いっきり吐き出した。
「や、やだ。ごめん。すっごいカッコイイおっさ…いや。お兄さんだったよ。奥さん、嫌。お母さんの方もすっごく綺麗」
あたしが苦笑い気味に言うと、コルクは、あたしの服にこぼれたココアを、持っていたハンカチで拭いてくれる。
 コルクって優しいな。あたしのお兄ちゃんなら、こんな感じになってたのかもしれないなぁ。
「ああ、ごめんごめん。んで、コルクの旅の目的は?」
「実は、父親のカインと母親が、裏の世界の魔物によって殺されてしまってね。その敵を討つために姉さんと旅をしているんだよ」
しかしコルクの父親があんなんだとは…まぁ母親の方はすっごい美人さんだったけど、そーいえば、シャパさんに似てるかも、お母さんの血を継いでるんだ。
「なるほどねー。誰が殺したのかわかるの?」
「それがわかってないんだよなぁ」
その時、コルクは、何かに気づいたのか、一瞬で火を消す。
奥の方からゆっくりと動く足音が聞こえてくる。しかも何匹もいるようだ…。あたしは、怖くなり、コルクの側に移動する。
暗闇の中から光る目が現れる。いや、目じゃないカンテラの明かりだ。その明かりが、獲物を探すように、きょろきょろと動いている。
さらに、だんだんとその姿が見えてくる。カンテラを持ったモンスターが見えた、オレンジ色の体に、人間が着るような鉄の鎧を着ている。体長2メートル程で、金色の目。長い剣を持っている。そのモンスターは、二十匹くらいいた。カンテラと剣を一匹ずつ持っていた。
「コ、コルク」
あたしはコルクの腕をしっかり掴み、小声で震えながら言う。
「魔法陣の中だ。大丈夫」
そう言うと、一応剣を抜くコルク。
なんでこんなにいるんだろ。
「パヨピヨ。みんなをゆっくり起こしてくれ」
小声でコルクが耳打ちをする。
あたしはゆっくりゆっくりみんなを小声で起こす。注意しながら、声を出さずに起きてって言う。モイストは、気づいてたみたいで、すぐに起きてくれた。
そのうち、そのモンスター達は、魔法陣に近づき、臭いをかいできた。
「やばいな。ばれそうだ」
シャドルが冷や汗を流しながら言う。
「なんで? モンスターに見えないはずじゃないの? なんであいつら寄ってくるの?」
「バカ。魔法は、絶対的じゃねーぞ。あいつらは、ムドって言って、頭のいいモンスターだ。人間のように道具を使いこなせることができる。あーやって臭いをかいて、おれ達を見つけ出そうとしてる。これだけ人数がいるんだ。臭いがたくさんする方に来たんだな。とりあえず動くな静かにしとけよ」
と、小声でシャドルが言う。
髪の毛が風が吹いたように、空中を舞う。上を見ると、ムドの鼻がその場にあった。
「きゃああああああああああああ」
あたしは大声を上げ、無我夢中になり、その鼻から逃げる。
「パヨピヨちゃん。魔法陣から出てますわ」
シャパさんの声で、ふと我に返り、足元を見てみると…。
え? ああああ! 夢中になってて魔法陣から出てるの気づかなかった。なんとも間抜け…。
慌てて魔法陣の中へ入ろうとすると、一匹のムドはそれを見逃さずに、あたしの体をぎゅっと掴む。
「やばい」
コルクはすかさず魔法陣から出て、あたしの体を掴んだムドを、突き飛ばして、あたしを引き寄せ抱きかかえる。
苦痛の悲鳴をあげて倒れたムド。大勢の不気味な眼が、すかさずこっちを向く。
「みんな魔法陣から出ろ! 早く逃げるんだ!」
コルクの声と共に、みんなは魔法陣から出ると、ムド達は剣を持ち、襲ってきた。
「多すぎですわ…」
シャパさんはそう言うと、銃をムド達に向け、そのまま引き金を引いた。弾はムド達の足元にストンと落ちる、それと同時に、弾の中からピンク色の煙が出てきた。
「うわ。何あれ」
「睡眠弾ですわ。さあ。今のうちに…」
どんどんとムド達が倒れていく。よし、今なら逃げ切れる。
「パヨピヨ!」
モイストの声が聞こえ、モイストの方を振り返ると、彼の後ろに黒い影が見えた。その影が消えたと思ったら…あたしの目の前に来て…。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections