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王女パヨピヨ愉快な仲間達 GROW UP〜王家の指輪〜  作者:桜田霞

第5回   モンスターに育てられた少年
次の日の夜。薄暗い山道の草むらに隠れながら、夕飯のパンを食べていた。町から南東にあるこの森は、カバジェという森。これもサムワさん達に教わったことだけどね。今日の夜空もとってもきれいだ。星が一つ一つ光っていて、誰が一番輝くかを競っているかのように見えた。
ちょっと湿ってるや。このパン。パンってこんなにまずいのか…。お城のパンは、高級パンだもんな…。今日も狩りか。なんで、あたしってこんなめんどいことやるっていったんだろ。今更だけど、かなり後悔してる。冒険って楽しいけど、寝る場所とか食事を何とかしてほしい…。っていったら、あたしのわがままになるけどね。
昨日の寝床は、荷台の中。うう。花の乙女が寝る場所じゃないよ。
右手に持っていたカンテラを地面に置くと、(これは光を当てる道具で、行く前にサムワさんにもらった)自分の膝に顔をうずめた。サムワさんとダールさんは、モンスターを仕留めるために、手分けして狩りへいった。あたしは、ここで待機中。荷物を見張る役。聞いたところによると、ここには他のハンターもいるから、荷物を盗まれたり、狩ったモンスターを奪っていく人もいるらしい。
 それにしても、一人ぼっちになると、心細い…。しかも夜だし、怖くなってきた。
「へくっしょん」
夜の森は少し肌寒かった。木の枝がぶつかりあう音が、不気味さを放っている。
ふと周りを見ると、動物を捕まえるような罠がいくつも張ってあった。きっと他のハンター達の罠だ。
「こんな罠あるんだ…」
その時、ガチャーンと何かが引っかかる音が、暗闇の森に響きわたった。
「ガルルルル」
その不気味さをさらに増すかのように、反対側の草むらから、獣のうなる声がした。
あたしは目を見開き、もっていたパンを地面に落とすと、両手で口を抑える。
何かいる…!
恐る恐る目をこらして、反対側の草むらの隙間から、覗いた。
ドキドキ…。
片足が罠にかかっていて、一生懸命それをとろうと口で罠に噛み付いているモンスター…いや。少年がそこにいた。年は十二歳〜十四歳くらいの。とても人間とは思えない、動物的な動きをしていた。
ボロボロの布をはおり、少し長めの前髪が、左目をちょうど覆っている。少年のくせにちゃんと筋肉がついている。
少年は、あたしが見ているのに気づき、こっちにうなり声を響かせている。
大変。あの子痛がってるみたい…。罠をはずしてあげなきゃ。
「うう。怖いな…」
カンテラを持つと、一歩ずつ少年に近づいていった。
間近まで近づくと、少年はさらに威嚇する、それと同時に何か奇妙な音が…。
グルルルル…。
お腹の音だ! まさか、この子お腹すいてるのかな?
あたしはさっき落ちたパンを拾い上げ、細かくわけると、口でふーっと二、三回息を吹きかけた。
「お腹すいたんでしょ? あたしのパンだけど、あげるよ」
手のひらのパンを少年の口にもっていく。
少年は疑い深い目であたしを見ると、パンの臭いをかきだす。
なんだか可愛い。本当の犬みたいだ。
あたしはその様子を愛らしい目で見ていた。
その時、大きな音ともに、あたしの腕を何かがかすった。自分の腕を触ってみる。  
うっすらと一直線上にきれいな切れ目ができてて、そこから血が流れていて、怪我した部分がとても熱く感じた。
「ぎゃああああ。血が」
地面のほうに目をやると、そこには短剣が突き刺さっていたのだ。
「そこをどきなさい」
木の葉っぱが生い茂っている辺りから、その声が聞こえてくると、すっと人影が木の上から降りてきた。
月の光が、その人影を写す。二十代くらいの女性がいる。闇に溶けるような真っ黒な服を着てた。真っ赤な唇と色気のある切れ長の目が現れ、肩まで伸びる髪をかきあげると、あたしのほうを甘い目つきで見てくる。
「お嬢ちゃん。ここはあなたのような可愛い子がくる場所じゃないわよ。さっさと家に帰りなさい。私は、その子に用があるの」
その女の人は、腰に下げていた銃を持つと、少年に向けていた。
少年は奥歯をむき出しにして、低い声を出す。
「ちょっとまって! この子は、人間じゃないの?」
少年をかばうように、両手を広げて、女の人の前に出た。
「その子は、モンスターによって育てられた人間よ。見せ物小屋に連れて行くのよ」
モンスターに育てられた? そういわれて見れば、動きがモンスターっぽいっていうか、動物っぽい。
「さあ、その子をこっちに渡してくれないかしら?」
「脅えてるじゃない! だいたい、この子の本当の母親ってどこにいるの?」
女の人は怪しく笑い出した。
「この子の本当の親は、行方不明よ。育て親のモンスターは、私が捕まえようとしたら、刃向かってきたので、私が殺したの」
「そんなの酷い!」
女の人は疑問を持つような顔をし、腕を組む。
「なぜ酷いの? モンスターなのよ。モンスターだからいいの」
「モンスターって、そーいうものなの?」
女の人は、眉毛を持ち上げると、銃をあたしの額に突きつけた。
「ごちゃごちゃいってないで、さっさとそこどいてね」
この人の考え方がわからない。モンスターって殺されるためにあるの?
「どかない!」
 あたしは、その女の人をじっと睨みつける。
「嬢ちゃん!」
ダールさんの声で初めて、自分がどんな危機にあってるのかを気づいた。
そーいえば銃を突きつけられてたんだ…。
「ちっ。人が来たか」
女の人はそのまま森の奥へと走り去った。
あたしはその場でよれよれと座り込んだ。
「大丈夫か?」
サムワさんがあたしの肩を揺さった、あまりの怖さに声が出なかったのだ。
「ところで、この罠にはまってるガキはなんだ?」
少年は、ずっとこっちをにらんでいた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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