あの後、王家の指輪を持ってきた時、一番先に抱きついたのは、父上だったな。なんだかんだであたしの事、一番心配してたみたい。母上から聞いた話だけどね。これで、あたしも晴れて国の継承者として認められた。正式に継ぐのはもっと先だけどね。 あ。そうそう。ハンド達の方は… ハンドの方は、ドラゴンを連れてこの大陸を後にした。お兄ちゃんを捜すために…。 シャドルとアヨユは、なんだか馬が合ったみたいで、二人で旅に出るとか言ってたな〜。シャドルのお母さんの病気を治す魔法を覚えにいかなきゃいけないしね。 コルクとシャパさんは、敵討ちのためにまた旅へ出た。あの王家の剣を手に入れてね。これからは、あのおっさん。いや、カインさんの事を、悪く言わないでおこう。 モイストもケインと一緒に今頃森の中で暮らしているんだろうなぁ。 それで今日は王位継承として認められた、あたしのための舞踏会が行われるのであった。お城の大きな大広間。今日は舞踏会のため、謁見で使う場所を会場としている。トランペットの音と、人々の歓声が鳴り響く。 「お姉さま! まったくどこにいらっしゃるのかしら…」 上品な足音をたてながら、廊下に響くパヨリンの声。 舞踏会には戻りたくないのよ。食事を食べるだけならいいけど、あんな堅苦しい場所に何時間も居れないよ。 パヨリンが廊下を完全に通り過ぎるのを確認したら、廊下に出る。 「見つからない場所に隠れよ」 見つかったら舞踏会に強制送還されちゃうからね。 廊下を少し歩くと、奥に階段がある。そこを登れば、屋上へつながっているのだ。ドレスのまま慣れないハイヒールで階段を歩くあたし。屋上へ行くと、あったかい太陽を浴びながら、両手を広げる。 「う〜ん。やっぱ太陽って気持ちいい!」 あたしはその場に寝転ぶと、右手の人差し指に光る物を見る。 そう。王家の指輪だ。 これを取る間に色んな事をやってきたなぁ。 ハンドと出会い、シャドルと出会い…。一人一人の懐かしい出会いが鮮明になって蘇ってくる。 そう思うと、あの出会いが不思議と懐かしく思えた。つい最近のことなのに、もう遠い昔のような感じがした…。 流れ行く雲を見つめながら、考える。 この広大な大陸で色んなっていっても少ないけど、冒険をしてきた。海の向こうは、もっと知らない土地がいっぱいあるのだ。そこでは、また旅してきた仲間と会える予感がする。 「よし、皆に会いに行こう!」 あたしは起き上がると、階段に向かって走り出した。 「ハイヒールが邪魔だ〜」 ハイヒールを脱ぎ捨て、階段から降りていくと、丁度パヨリンと逢ってしまった。 「あ。お姉さま」 げげん。めんどうな相手と会っちゃった。 あたしはその発言を無視して、そのまま廊下を走っていく。 「お姉さま! 裸足ですわよ! 靴くらいちゃんとお履きになって! あ。お姉さま。どこへ?」 「旅に出るの!」 そう言うと、パヨリンは目を丸くする。 部屋に戻り動きやすい格好に着替えると、リュックを背負う。 鏡に映る自分を見て、前より輝かしい顔になってることに気づいた。今日も部屋の窓には自由な小鳥達が飛び交っているのであった。 追っかけにいくから、みんな待ってて!
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