マグマの上に大きな天秤が現れ、左には指輪が乗っており、右には、丸い玉が現れた。その中には、ハンドとシャドル、コルクとシャパさん。それにドラゴンちゃんが閉じ込められている。 「どうなってるの!? なんでハンド達が」 「彼らには人質になってもらいました」 と、レッドフレイム。 「どうなってんだ?」 シャドルが玉の中から騒ぐ。 「いちいち騒ぐな。見ればわかるだろ」 ハンド君が呆れたような口調で言う。 「今は、喧嘩している場合じゃないぞ」 コルクがなだめるが、二人はにらみ合ったままだ。 「そこからは出れませんよ」 と、レッドフレイムの声が響き渡った。 なんとなく嫌な予感がした。 「みんなを出してあげて! 一体何を始めるの?」 「王家の指輪を取るのなら、彼らには、このままこの墓に幽閉することにいたします。彼らを選ぶのなら、指輪を取る事ができなくなりますよ」 と、レッドフレイム。 そんなのって…。あたしどーすればいいの? ハンド達を見捨てるわけにもいかないし、それに王家の指輪を捨てることも…できっこない。だって唯一家に帰る手段だし、それに、王家の指輪っていったら、とっても貴重なもの。 「簡単な事です。仲間と言っても、彼らとはつい数日前までは他人だったのですよ?」 「てめぇ! 何おちびちゃんに変なこと吹き込んでやがんだよ!」 アヨユがあたしのポケットから急に出てきた。 「ああ。なんでここに…」 ポケットに入れたままだった。コインだから危害はないのかな? 「これを決めるのはパヨピヨちゃんなのですから、恨みっこなしですわ」 シャパさんが真剣な顔で言う。 「あたし…あたし」 緊張や焦りのせいか、手が汗でびしょびしょになっている。マグマの熱のせいかもしれないけど。 もう嫌だ。ここから逃げ出したい。 「パヨピヨちゃん。ゆっくり落ち着いて聞け」 アヨユがポケットから顔をひょこっと出す。 「レッドフレイムとやらの言葉に惑わされるな。以上。俺様からのアドバイスだ」 それだけ言うと、アヨユはポケットから顔を出さなくなってしまった。 「さあ。決めなさい」 レッドフレイムの声がさっきよりも強く聞こえる。 それに合わせ、マグマの音があたしを急かしているようにも聞こえてきた。 「父上にも、同じ試練を出したの?」 「そうですよ」 今王になっている父上は…王様になる方を選んだってことか…。 「こんなのできない! わかんないよ!」 あたしは泣きながら、その場に崩れ落ちた。 あぁ、情けない。なんでこんなことで泣いてるんだろ。 「おい」 相変わらず無愛想な声であたしに呼びかけるハンド。 涙目で顔を上げると、いつもと変わらない無表情の顔がそこにあった。 「お前が必要な指輪を選べ」 「無理だよ。ハンド達を見捨てろっていうの?」 「俺達は死なない」 前と同じ自信に溢れている顔だ。 父上が王様になる方を選んで、仲間を見捨てたのなら、あたしはそこまでして国を継ぎたくない! そんなものなんていらない! 「あたしに必要なのは、仲間の方です!」 「いいのですか? 国を継ぐ事はおろか…城へ戻れなくなるかもしれませんよ?」 レッドフレイムの言葉に、あたしは何かが切れた。 「あたしは仲間の方が大切なの! 初めて一緒に旅をした仲間なの!」 「わかりました…」 すると、レッドフレイムから眩い光が放たれた。 父上は、仲間を選びましたよ。それで、王家の指輪を手に入れました。正解は、仲間を選んだ方ですよ…。
レッドフレイムの声が白い記憶の中で聞こえてきた。とっても安らげるような声で、あたしに話しかける。そして、右手には王家の指輪が現れた。 「ああ。やったわ。王家の指輪…」 その眩しい光を受け、丸い玉からみんなが解放された。それと同時にポケットの中にいたアヨユが出てきた。 「うっ…」 アヨユが眩しい光に包まれ、その光を見ると、アヨユが人間の影を帯びていた。 「まさか…人間に戻ったの?」 あたしがアヨユの側に駆け寄った。 その姿は人間の姿だ。間違えなく人間の足に人間の手を持っている。そして顔はなかなかの美青年だった。文句の言い様のない顔だ。目はエメラルドグリーンで、綺麗な金髪が肩まで伸びている。そしてその髪を掻き揚げるアヨユ。 「キザだな」 あたしがボソっと言うと、アヨユはずこっとこける。 でもカッコイイ…。この顔なら、ちょっとムカツク言葉でも言ってもいいかも〜。 「あら。意外と美青年ですわね」 シャパさんが微笑む。 「なんで人間の姿に戻ったんだろう…」 と、あたしが言うと、聞いてもないのに、アヨユの説明が横から入る。 「王家の指輪の力で呪いが解けたんじゃねーのか?」 あたしは王家の指輪を見る。アヨユは嬉しそうに自分の体を見ていた。その姿が王家の指輪と一緒に光って見える。 「でも良かった。みんな無事で」 あたしはそう言うと、みんなに抱きついた。あぁ。ドラゴンちゃんも無事だわ。 「あぁ。良かった…」 余韻に浸っているコルクの目に何かが飛び込む。 「あれは…」 地面に突き刺さっている二本の剣を見つめる。 「まぁ。これは勇者カインの剣ですわ。つまりわたくしたちの父親ですが…」 「そんなにすごい物なの?」 「ええ。どんな魔物でも切り倒せる剣だと言われてますわ。とっても高級な宝石と鉱石で作った世界に二つしかない剣ですわ」 自分の王家の剣なのに、まったく知らないあたしを見て、シャドルはこう言う。 「お前それでも王女かよ…」 「王女よ! コルクとシャパさん。これを持っていって。お父さんとお母さんの敵討ちに使って」 「しかし…そんなことしてもいいのかい?」 コルクが不安そうな顔で言う。 「大丈夫よ! 王女はあたしだもん」 ニコっ笑うと、コルクとシャパさんもニコッと笑い返してくれた。
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