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王女パヨピヨ愉快な仲間達 GROW UP〜王家の指輪〜  作者:桜田霞

第12回   モイストの決意!
その夜の事だった。静かな夜の森は、昼とは違う雰囲気を放っていた。虫の鳴き声が、合奏を奏でており、夜空にある月が、舞台のバックライトになっている。   まるで森のオーケストラを聴いているみたい。今回の見張りは、皆で交代をしてやることになった。
「だああああああ! 耳元で鳴る虫がうっとうしい!」
あたしは布団を跳ね除け、みんなを見渡す。幸せそうな寝顔に、思わず笑みがこぼれた。あのドラゴンちゃんは、リュックの中にうずくまって寝ている。
「眠れないの?」
 見張り役のシャパさんが優しく声をかけてくれた。
「うん。虫が…。ちょっとお手洗いいってくるね」
「ええ。お気をつけて。カンテラと、これを…」
 そう言うと、シャパさんは、モンスターが嫌がる匂いの香水と、カンテラをあたしに手渡してくれた。
「ありがとう」
 あたしは森の奥の方へ行く。
黒い人影が揺れてるのが見えて、あたしはカンテラを当てた。
「眩しい…」
 迷惑そうな顔をして、あたしを見るハンド。
「なんだ。ハンドか。びっくりするじゃん」
 あたしはほっと胸をなでおろし、ハンドの方を見る。
 この人って本当に不思議な人だ。何を考えてるかわかんないしね。それにあのドラゴンを見た時の反応といい。
「ハンドってよくわかんないや」
「何がだ?」
「色々よ。ねね、一つ聞いていい?」
 あたしがハンドの眼をじっと見る。
「くだらない質問でなければいいぞ」
 この一言ってなぜかカチーンと来るんだよね…。こういう性格だから仕方のない事なのかもしれないけどね。
「あのドラゴンを見て、何か知ってる様子だったけど、何かあるの?」
 答えてくれなさそうな気がしたが、興味本位で聞いてみる。
 すると、意外や意外、結構素直に答えてくれたのだ。
「以前、俺が“ある男を探している。”って言ったよな? 実はその男とそのドラゴンが、引き合わせる鍵になってる。その男ってのは、俺の兄だ。俺達は裏の世界の住人だ。兄はそのドラゴンの力を狙っている。お前あのドラゴンにどんな力があるか知ってるのか? とてつもない力を持っていて、世界をこの手にできるのも夢じゃない…俺は兄を止めるために旅をしている」
 ハンドがあの裏の世界の住人? どうりで邪悪なイメージが…。
なんだかよくわかんないけど、実は後の方の話あんまり聞いてなかった…。
「まさかドラゴンちゃんも盗む気じゃ…」
 簡単に信用できないしね。お金盗んだし…。
「勘がいいな。そうしようと思っていたが、やめた。必ず返しにいくから、そいつを貸してくれないか? 長くなるかもしれんが…。それにお前がもってたら危険だ。それを持ってると、兄は絶対お前の所に来て、お前を殺して、ドラゴンを奪っていくだろう。どっちにしろ俺が持ってた方が都合がいい」
「でも…それじゃあハンドが…」
死んじゃうじゃんと言いたかったけど、言葉が出ない。
「俺は死なない」
その目は、自信に溢れていた。なぜかあたしは、彼を信じてみようという気になった。この人は嘘をついてないって思った。

そして、次の日の朝。
明るい朝日の光があたしに舞い降りた。鳥達が一斉に飛び立った音がして、目を覚ます。ここに何日もいても仕方がないので、朝食を済ませた後は、さっそく出陣となった。確かに野宿ばっかりはもう勘弁してほしい。
森を歩いていると、色んな植物がいる。花に口がついている植物や、ツルが手のようにくねくねと伸びている植物。その上には、奇怪な音を立てて住み着く虫達。
「うわー。気持ち悪い…こいつら、何もしてこないの?」
「ええ。気持ち悪いのは仕方ないことですけど、こちらが何かをしない限り、襲ってきたりはしませんわ」
と、シャパさんはニッコリと笑う。
趣味の悪い植物愛好家の家みたい…。こんなにいっぱいいるし…。
「!」
モイストが匂いを嗅ぎ始めた。
ハンドとコルクが回りを見渡し、武器を取り出す。シャパさんも銃を、太ももから取り出そうとする。
その時だ。素早い動きで、何かがシャパさんのを襲った。
「きゃあ」
銃を落としたシャパさんは、右手を優しくさする。
「ああ〜。シャパさん〜」
アヨユが、あたしのポケットから出てきたが、無理矢理押さえつけた。
「大丈夫? 姉さん」
コルクが駆け寄ると、シャパさんは軽く頷く。
「それより、前を見てコルク…ライトオオカミですわ」
「ガルルルルル」
一匹の三つ目を持った狼が、シャパさんの目の前にいた。かなり警戒した様子で、こっちを睨みつけてる。
「待って!」
モイストがかばうように、三つ目の狼の前に出た。
「どうしたんだ? モイスト」
シャドルが不思議そうに首をかしげると、モイストは悲しそうな目を向ける。
「ダメ! 友達!」
「??友達?」
みんなは武器を降ろした。何か訳ありっぽいみたいだしね。ゆっくり話を聞いたほうがいいみたい。
モイストの話によると、このモンスターは、自分と同じ一族。ライトオオカミとは、暗闇で光る目がライトの様に見えるとこからきたらしい。このライトオオカミの名前は、ケインと言って、モイストの昔からの親友らしい。このケインと仲間達も人間によって捕まえられたが、助けを呼んでくるために、ケインだけ命からがら逃げ出した。だが、それも無駄な抵抗で、追ってきたハンターによって傷を受けた。なんとかここまで逃げきれたのが奇跡に近い。そう言えば、家庭教師の先生が言ってた。ライトオオカミの毛皮は高く売れるって…。
モイストとケインが話している言葉はわからないが、二人とも久しぶりに会えて、とっても嬉しそうみたい。
シャパさんがケインのケガを治したみたいだけど、やっぱりケインは、あたし達を警戒している。
「パヨピヨ…オレ…」
こういう時ってわかる。何度も何度もこういう仕草するから…。きっと言い辛いことがあるんだなって。
「何? ゆっくりでいいから」
あたしが彼の肩を抑える。
「オレ…ケインと仲間、助けに行く。…パヨピヨ、離れたくない」
そう言うと、あたしに抱きついて来た。
手伝ってあげたいのは山々なんだけど、あたしにもやることはあるし。みんなだって他にやる事があるのだ。それにケインは、人間は信用してないから、たぶんあたし達がついていく事は、絶対に無理だろう。
「モイスト。行っておいで。大丈夫。絶対また会えるよ。信じて」
あたしがモイストの手を優しく包み込む。あたしの事ずっと親か何かと思ってたのかな。こんなにあたしの事思ってくれてたなんて…正直嬉しいかも。そう思うと、涙腺が緩む。
「…」
モイストが黙り込んでいると、あたしが背中を押す。
「モイスト、お互いがんばろう! また絶対会おう! 約束する」
「うん…。ありがと。みんな」
そう言うと、モイストとケインは森の奥へ消えていった。
「モイスト大丈夫かな?」
自分で大丈夫とか言いながら、結構心配しちゃう。
「大丈夫だ。モイストはもう大人だ。パヨピヨが思ってるほど子供じゃないと思うけどなぁ」
コルクがあたしを安心させるように、頭をなでる。
またね。モイスト。どっかで会おうね…。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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