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face 作者:雪邑楓

第7回   6.家路2
俺が人と会話をしなくなったのはいつからだろう。
仕事相手とも、いつの間にか会話を交わさなくなった。
最近は便利な世の中で、全てインターネットという仮想世界において賄えるんだ。
言葉も、依頼も、報酬だって、全部。
何もかもをインターネットに頼るようになったのは・・・いつだっけ。
誰かに手取り足取り懇切丁寧に教えてもらった・・・そんな気はする。だが、それが誰だったのかどこでだったのか俺は覚えてなどいない。

忘れやすい俺の脳ですら最初の仕事の事はちゃんと覚えてる。その頃はまだインターネットなんて知らなかったし、勿論金だって持ってなかった。
そう、最初は生きるために仕事をしていた。
仕事をして、金を貰って。
仕事をして、そこに自分の生を確かめて。
ただひたすらに一生懸命俺は働いた。

最初の相手は・・・老人だったと思う。
よぼよぼの、今にも崩れ落ちそうな男。
金だけはしっかり持っていて、たくさんの怨恨を買っていて、そうして己も人を憎んで憎んでいたっけ。
ある日俺が―――まだ俺が普通に学校に通っている頃だった―――通学路をぷらぷらと歩いていたら、突然声をかけてきたんだ。
「お前、金は欲しくないか?」って。
勿論、その当時貧乏だった俺は即答したさ。
「あぁ、欲しいね」
そしたら爺さん、途端に目の色を変えて俺をまじまじと見つめてきた。
「ならば、俺の元で働かないか?」
どうしてだろう?あんなにも胡散臭い爺さんだったのに。
その固い決心を光らせてた目にやられたんだろうか・・やばい事なんじゃないかって不審に思ったのにもかかわらず俺はその場で爺さんのところで働くと言ってしまったんだ。
それが、俺の人生をここまで狂わせるだなんて思いもしなかったけどな。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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