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face 作者:雪邑楓

第2回   1.婆の過去(1)
若いの、そんなにびっくりしなさんな。
婆はそう始めた。
一方俺は情けないことに、腰を抜かして呆然と婆の顔を見上げていた。
壁にくっついてるだけの顔が、今まで表情は確かに浮かべていたが一言も話さなかった顔が、勿論話さないだろうと思い込んでいた顔が・・・話したのだ。
しかも、ちゃんと唇だって動いてる。
本当に、しゃべっているのだ。
腰を抜かさずにいられるだろうか?
「ば、婆・・ちょ、ちょっと待ってくれ」
俺はそう言うので精一杯だった。
「いくらでも待とうじゃないの」
婆はかかと笑う。
俺はようやく頭の中で整頓できてきたような気がしてきた。
「婆、お前は・・・誰だ?」
ほっ、ほっ、ほっ・・・婆は声を上げて笑い、そうしてにやり、と顔をゆがめる。
「若いの、そう慌てなさんな。
 これからよくよく聞かせてやろうぞ」
婆は一呼吸置いてから、静かに問いかけてきた。
「若いの、本当に知りたいのかい?」
ああ、俺は即答した。
「じゃあ、もう一つ訊くよ。
 ・・・私を見て、誰かに似ていると思ったりしたことはないかい?」
婆はじっと俺の目を見つめながらそう問うた。

婆の顔・・・
言われてみれば、確かに俺はこの顔をどこかで見たような気がする。
それも気のせいかもしれない。
だが、どこかで見たような気がしてならないのだ。
「どこで・・・?」
首をかしげながら婆を見た。
「そうかい、そうかい。
 思い出さないか・・・ならば、こうしよう。
 お前がこれからもし、私の本当の姿を思い出せたら、その時には必ず私の過去を話してやろう」
ただし、婆はそう付け足した。
「ただし、なにもしないわけじゃあ・・・若いの、あんたは満足しないだろう。
 だからちゃんと思い出せるようにヒントはあげよう」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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