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Emotion 作者:ジュンピヨ

第2回   Emotion2 全ては彼
ゆらは高校1年の誕生日に携帯電話を初めて持った。
友達は既に持っている子も多かった。

中学時代仲のよかった友達はみんな進学校へ合格。ゆらは勉強はそこそこ出来たが、勉強が好きなわけではなかった。

近くの高校へ推薦で入ったが、前回書いた通り父の死をきっかけに辞めてしまった。
本当は高校にも行く気はなかった。だけど今の時代高卒は当たり前。
早く働いてお金が欲しくても知識、常識、そういった事も高校で学ぶべきと母親の願いだった。
今思うと、学生の頃って「うるさいな・・」って親の意見を聞きたくなかったものだが、こうして大人になり「あぁ、あの時お母さんが言ってた事はこうだったんだ」としみじみ思い知らされる。

経験ってすごいと思う。年月を生きてきたからこそ、経験したからこそ、助言できるのだから。

携帯を持って初めてやったのは「メル友探し」だった。
普通高校から通信制へと編入したゆらは入学まで1ヶ月あったので家にいた。
課題のレボートをこなしても、家の事をやっても時間が余る。

友達は日中は学校で授業を受けているし、私は勉強はしていても日中外に出れば近所の目が怖く感じた。
あの子高校へ行かずに何しているの?と。
田舎だし、ゆらは特にそう感じてしまい、平日は家にいるようになった。

今の出会い系サイトは危ない事ばかりだけど、あの頃の出会い系サイトは純粋にメル友探しが多かった。


話相手が欲しかった。ゆらの心を軽くしてくれる人が欲しかった。

ゆらは携帯を持って間もないため色んな書き込みにすぐに返事を返していた。
普段めぐり合えないような人とメール。
時には相談にも乗ったりした。

ある時、一人の男性に出会った。
40代の重役さんだった。
当時ゆらは16歳。メールを重ねていくごとに会おうかという事になった。
ゆらは身の危険も考えず会ってしまう。
今ではかなりあぶないことしたなぁ・・・って思う。

彼は高級焼肉屋に連れてってくれた。
ゆらは初めてハラミを食べた。
「おいしい!!!」
彼のいろんな仕事の話を聞きながらお肉をほおばった。
「ゆらちゃんは今までどんな生活してきたの?」
「えっ??」
「あんまり美味しそうに食べるからさ。
 久しぶりにそういう顔の子を見たよ」
ゆらは優しくされたのが嬉しく、彼の年齢が40代ということもあり、
父のような温かさを求めた。
まるで父と話しているような感覚で。

その日、ゆらはお腹一杯にして帰った。
帰ってすぐにメールが来た。
「ゆら、俺と結婚しよ」
びっくりだった。
彼には奥さんがいる。メールして1週間。そんな話をされるなんて思わなかった。
「奥さんとは別れる。
 ゆらの初めての相手になりたいんだ」
ゆらは恋愛経験がない。
処女だ。彼は真剣だった。

数日間、彼からのメールはプロポーズメールに変わった。
ゆらはもし次に彼と会うことになれば処女を捧げるのだろうと思った。
なんだか表現できない感情を彼に抱いていた。
この引きこもりの生活から抜け出したかった。
彼はお金持ちだ。
ゆらに色んな事を教えて、学ばせてくれる。
ゆらは彼が好きなのだろうか・・・?

ゆらはなんだかもう人生を決めていた。
そんな時、「ナオヤ」という人からメールがあった。
「・・・・ナオヤ」
ゆらはなぜか気になった。
最初に話をしたのはたわいのない話。
自分の事をすらすら話した。
ナオヤは深夜の電話、朝日が昇ってもずっとゆらの父親の話や、
家での出来事など嫌がらずに聞いてくれていた。

ナオヤと毎日何十回とメールを重ねた。
ゆらが家で無理をしていた事、母親とうまくいってない事。
すべて受け止めてくれた。

40代の彼はゆらと電話で話すと嬉しそうにした。
ナオヤも同じく嬉しそうにした。

ゆらは40代の彼のやさしい声に引き込まれそうになった。

ゆらは自分を理解してくれる人ならば全てを捧げたい。
尽くしたい。
そういう人に出会いたかった。


ゆらの白目が青い事をナオヤに話した。
「きっときれいなんだろうな・・・」
体が震えた。
過去に中学の担任の先生がきれいと言ってくれたあの感覚。
電話ごしに涙がこみ上げゆらはその瞬間、この人に会いたい。
この人ならゆらを受け入れてくれる。
好きという感情が生まれていた事に気づいた。

ナオヤがいた事でゆらは引きこもりでも頑張れた。
近くの図書館に勇気を出していけるようになった。
ナオヤは仕事だけどメールできる。それがゆらの楽しみになった。


初めてナオヤにあった日。
ゆらは精一杯のオシャレをしてみた。
普段スカートははかないけど、ロングスカートをはいてみた。
完全にナオヤに恋をしていた。
髪は短かったのでそのまま。
化粧なんてした事もないのでそのまますっぴんで。

コンビニで待ち合わせ。
ゆらは今でもはっきりと覚えている。
ナオヤの顔を見た途端、自分も見られているんだとすごく恥ずかしくなって
「いやっ!みないで!みないで!」
って自分の顔を塞いで歩いて来た道を戻ってしまったっけ。

「おいおい・・ゆら」
爽やかな笑顔だった。
指の隙間から見たナオヤは今風の茶髪で、背は高くほっそりしていた。
年上のお兄さん・・・
3つしか離れていないけどナオヤの顔をまともに見れないほどドキドキしていたのだ。
私、こんなんで嫌われないかとそんなことも頭の中回っていた。


そしてナオヤはゆらの目を見て
「すっごくきれいだな!!
 びっくりだ」
「気持ち悪くない・・?嫌いにならない・・・?」
「これはゆらにしかない目なんだよ?
 俺はゆらが好きなんだからゆらのこんなきれいな目見れてうれしいよ」

涙があふれた。
ゆらはナオヤの一言一言に癒されていく。
ナオヤの目は真っ直ぐゆらを見つめていた。

ゆらの家で二人は手を繋いで色んな事話した。
時間があっという間にすぎてナオヤが帰らなくちゃ行けない時間になった。

「いやだよ・・・」
ナオヤと離れたくなかった。
ゆらはわんわん泣いた。
ドキドキがとまらない。こんなに好きなんだ。
ナオヤは優しく頭を撫でてゆらにキスをした。
体が震えた。ファーストキスだった。男の人にこうして触られるのなんて初めてだし、
40代の人とは隣にいてもこんなにドキドキしなかったから。
ゆらは必死にしがみついた。
「ナオヤ・・・ナオヤ・・・」
感情が溢れた。

初めて会った日。ゆらはナオヤと結ばれた。
幸せだった。
自分だけを一途に見てくれるナオヤ。

人に愛される喜びをナオヤで知った。
この人の為に生きよう。
この人を幸せにしよう。

ゆらの中で人生が決まった瞬間だった。



                         Emotion2 全ては彼 END

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Novel Editor by BS CGI Rental
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