ある日、黄色いサンタクロースに手紙がとどきました。そ れには、こんなことが書かれていました。 「ぼくの家の犬がガラスの森に言ったまま帰ってきません。 ガラスの森に入った生き物は、なんでもガラスになってしま うといわれています。ぼくの犬をさがしてもらえませんか」
つぎの日、黄色いサンタクロースは黄色い自転車に乗って、 ガラスの森に行きました。そこは、町はずれにありました。 たくさんの木がはえていて、空が見えず、奥に入ると夜にな ったように暗くなりました。道が、とてもけわしくなってき たので、黄色い自転車を木にたてかけていくことにしました。 しばらく歩いていくと木がはえていなくて広場のようになっ たところに出ました。そこでは、青い空が見えます。そのと き、青い空の中に、きらりと光るものが見えました。それは ガラスになった鳥でした。ガラスになったまま空に浮かんで います。 木の上ではガラスになったリスが、きらきらと輝くひとみ で、こっちを見ています。木の下にはヘビがガラスの棒にな っていました。その前にはガラスのカエルがいました。 そこでは、いろんな生き物がガラスになっていました。
もう少し歩いていくと、ガラスの犬がいました。赤い首輪 をしていて、手紙を出してくれた男の子の家の名前が書かれ ていました。 「このガラスの犬が、あの男の子の犬だ。よし、つれて帰ろ う」 そういうと、ガラスの犬をもちあげようとしました。その ときでした。 「ちょっと待ってください。こわれてしまいますよ」 きらきらと輝く髪ときらきら輝く服を着て顔も手も輝いて いる不思議な女の人でした。 「あなたは、だれですか」 「わたしは、ガラスの森に住むガラスつかいです」 「あなたが、いきものをガラスにかえてしまったのですか」 ガラスつかいは、びっくりした顔をしました。 「いいえ、わたしは、そんなことはしません。ガラスの森に 入った生き物は、自分からガラスになるのです。ガラスにな れば、いつまでも、きれいなままでいられます」 「この犬もガラスになったのですか」 「そうですよ。その犬は、町のくらしよりも、森でガラスに なることを望んだのです」 「どうしてガラスになりたいのですか」
ガラスつかいは一本の木のほうに歩いていきました。その 木には、ガラスのセミがとまっていました。 「このガラスのセミは土の中で何年も暮らしてきて昨日やっ と表に出てきました。でも、あと少ししか、この地上では生 きられません。だから、ずっとガラスのまま、この森にいた いと思ったのです」 次にガラスつかいはガラスの犬のところへやってきました。 「この犬は、いままで家族に愛されてきました。しかし最近 は、おとうさんは、おしごと、おかあさんは、そうじ、せん たく、りょうり、子供たちは、他の子供たちと遊んでばかり で、だれも、この犬の相手をしてくれませんでした。そこで、 この森に来たのです」 「そうだったのですか。でも男の子は心配しています。ぼく に、この犬を探すように手紙をくれました」 黄色いサンタクロースがポケットから手紙を出すと、風が ふいてきました。それは、ふわふわと飛んでいきました。ガ ラスの犬の上に、おちました。すると、ガラスが、ぴかっと 光ったかと思うと、ほんものの犬になりました。 「わん、わん、わん」 犬は、ガラスでなくなりました。 「男の子の気持ちがわかったので、もとにもどったのですね。 この森の生き物たちは、もどりたくなったら、いつでも、も とにもどれます」 犬は黄色いサンタクロースのまわりをとびはねていました。 はやく帰ろうとばかりに、うれしそうに。 「ぼくも、ガラスになりたくなったらガラスの森に来ますね」 「はい、かんげいします」 黄色いサンタクロースと犬は、ガラスの森をあとにしまし た。そのあとを、きらきら輝くガラスつかいが見送っていま した。 おしまい
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