ある事情で、毎年夏場に大王崎に行きます。いつも同じ宿に泊まり、同じ海を眺めます。ひなびた観光地です。毎回行くたびに土産物屋がつぶれたり改装したり変わっています。灯台がありますが、この風景だけは変わりません。宿から少し離れた浜は、いつも閑散としていてプライベートビーチみたいなものです。別に泳ぐわけではありませんが、陽光の下で海を目の前にして時間だけが過ぎて行くのは贅沢なひとときです。太陽で頭が麻痺し、波の音だけが聞こえてきます。小さいやどかりやふなむしが音もなく生きています。 帰りに伊勢神宮に行きますが、参拝した後に、おかげ横丁に寄ります。伊勢神宮は、巨木が生い茂る厳かな空間ですが、神の場所を人が作ったという作意が感じられます。それでも立派な木に圧倒されます。その一方で、おかげ横丁は、商人のたくましさを感じる世界が広がっています。神の国から俗世に辿り着く、そのコントラストが見事です。飲んで食べて、この世を謳歌するための場所でしょう。赤福のカキ氷を毎回食べます。ここでは、コロッケという庶民の食べ物が似合います。 やどかりとコロッケの話は、こうして出来上がりました。
第五十話は「黄色いサンタクロースと台風家族」です。「台風一過」という言葉を「台風一家」と勘違いすることから思いついた話です。親子の台風が登場します。
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