瓦礫の山となった場所に少年は立っていた。
5年前・・・西暦2006年にはそこはトーキョーという街があった。
しかし、今はもう見る影も無く破壊されつくしている。
廃墟となり半分が崩れ落ちた高層ビルや、以前は街を装飾していたであろうオブジェ等が残っている。
「神の仕業・・・か。」
少年は空を仰ぎポツリと洩らす。
遡る事五年。まだトーキョーが栄華を称えていた頃。
人々はこれから起きることなど何も知らずただ無常な時を過ごしていた。
「これが東京か。なるほど・・・欲に塗れた穢い場所だ。」
東京のはるか上空、雲の上で話す俗に言う天使。
それが三人何かを話していた。
しかし、その天使たちは人間が考えている天使とは根本的に違うところがある。
姿形は確かに人間の創造とした物と一致し白い翼を持ち、白衣に身を包んでいる。
だが思考は違う。
天使、そしてそれを統べる神たちは人間を欲深き愚種とし嫌い、滅ぼさんとしている。
「で・・・どうするんだ?ミカエル」
「大神ゼウスの命令だ。人間たちは驕り高ぶりすぎた。」
ミカエルと呼ばれた銀髪の天使は冷徹な表情のまま言い放った。
「でも・・・人間たちが私たちに何かしたと言う訳ではないのに滅ぼすなんて・・・」
「ガブリエル。仕方ねぇんだよ、神の命令に逆らったら俺たちが殺されちまうぜ?」
唯一女の姿をした天使『ガブリエル』が異論を唱えるが赤髪の天使に遮られてしまった。
「ウリエルの言った通りだ。我々は命令をこなせば良い。」
「・・・」
ミカエルの言葉にガブリエルはもう何も言うことは出来なかった。そして赤髪の天使『ウリエル』に最後の指示を出す。
「やれ、ウリエル。」
「はいはい・・・っと。」
ウリエルは適当に応対をするとその手を天にかざしながら詠唱を始める。
「七大天使ウリエルの名において命ずる。ここに生ずるは破滅の焔。すべてを焼き払い無と帰す物也。」
詠唱を終えたウリエルの手の上には火球。それは人間なら近づいただけで炭になるほどの高熱を発していた。
「目標・・・東京。5、4、3、2、1、・・・投下。」
ミカエルの指示を受けウリエルは静かにその手を東京に向けて振り下ろす。
そしてその数秒後、東京という名の都市は廃墟と化した。
少年は十六年前この東京で生まれていた。
しかし彼が十一歳の時、天使により両親、友人、親戚・・・全てを失った。
しかし彼は、幸か不幸か生き残ってしまった。
そして事件の翌日神からの宣戦布告によって知ったのだ。
全ての原因は神だと。
少年は神を憎んだ、そして誓った。
いつの日か神々にこの手で復讐をすると・・・。
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