「カノン・・・」
つぶやいた声は叫ぶようなクラクションに被さったけれど、ちゃんと伝わった
「何?」
ついに、風に流されて上空を泳ぐことが出来る様になった私達は ゆらりふわりと、 煽られながら深夜のビル街を漂っている ぼんやりとした声はどこに返す訳でもなく空中にこぼれた
「・・・人が逆流してる」 「そうね」
誰もが顔をうつむかせて、ゆっくりと着実に自分の帰るべき所に向かっているのを見下ろしている
「僕らも、逆らってるのかな」 「・・・そうみたいね」
途端、ハルは姿を闇に溶かした
「ひどいなぁ・・・置いてけぼりじゃない」
夜空に一人浮かんだカノンは遠くで響く救急車の音をいつまでも聞いていた End.
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