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平安遥か(W)千年の都へ 作者:ゲン ヒデ

第3回   3
              腹踊りの効用
称徳天皇の道鏡への寵愛に合わせ、諸臣が道鏡を持ち上げたので、道鏡の権勢が高まっていった。その縁者も出世する。
だが、称徳帝の治世では、実務を執る真備の献策のもと、大仏殿作りで疲弊していた国土は回復しだし、国の財政は徐々にだが、豊かになりだした。
財政に余裕ができたので、称徳帝は、ささやかな行幸をしばしば行なう。
白壁王は、御前次第司長官として、よく随行した。
泊まり先では、称徳帝に色々趣向を替えた腹踊りを披露したので、称徳帝は大いに笑い転げて、何時も旅に満足げであった。
 
ある日、行幸を終えた帝の許に、真備、伺候する。
 称徳帝は、上機嫌で旅の思い出を話し、ふと言う
「白壁を、東宮にしたらどうかのう」
「ええ!白壁王を」
 驚く真備に、帝、笑いながら
「いやなあ、妾が東宮になったとき、五節の舞を皆に披露したであろう。東宮になった白壁が、皆に腹踊りを披露する姿を思うてな。『麻呂は東宮、麻呂は東宮、よろしくなあ、よろしくなあ、皆の衆、皆の衆』と腹の顔を動かしたら、さぞや面白かろう、ほほほ」 
 御前の者達、みな笑い出す。
特に娘、由利は笑い転げる。
「これ、由利、はしたないぞ」
「でも、お父様、想像するだけで、おかしくて、おかしくて、…」
とまだ笑い転げている。
「まったく、白壁王に失礼だぞ」
 白壁王の腹踊りを見たことがない真備、馬鹿馬鹿しそうな顔をして、退出しょうとした。
 ふと見れば、百川は笑いもせず書き物をしている。気にもとめず真備は去った。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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