再び、あのお社 足取りも重く、山部東宮は東院(東宮御所)へ戻ろうとしていた。 前の分かれ道を見る。ふと北へ行こうと思う。家持の邸である。 娘の居場所を聞きに行こう、と思ったのである。 遷都先を教えてもらえるかも、との期待があった。 随員の真道に 「ちょっと寄り道をするぞ」 そばに、すうーと斉明帝が出てくる。当然、誰にも見えない。 道を曲がろうとすると、斉明帝の手が、山部の腰を目がけて動いた。。 山部の腰に、激痛が走る。いわゆる、ぎっくり腰である。 「ああ、腰が…うう」と呻き、座り込む。 あわてて真道、周囲を見て、 「あそこにお社があります。あそこでお休み下さい」 良継と永主が話をしていた、あの小さな社である。 真道の肩を借りて、お社に行き、戸が開かれ、社の狭い中に寝かされる。 「すぐに輿を持ってきます。しばらくお待ちを」と言い、真道、飛んで行く。 寝そべっていると不思議にも腰が温かくなり、痛みが薄らぐ。 ウトウトと眠気に誘われ、何やら夢を見始める。 地震が起こり、お社の中もがたがたと音を立てる。 だが山部、目を覚まさない。
地震が終わって15分後、迎えに来た真道、戸を開け、山部を起こす。 目を覚ました山部 「今のは夢か!信じられぬ。そんなことが。あああ!」 「殿下、先ほどの地震で、何かありましたか」 「地震?…そういえば婆さんが、地震の時、未来への…。あれは、夢だろうか。あまりにも生々しいかったが…。」あえぐ東宮 「どんな夢を」 東宮、考え込み 「ああ何でもない、途方もない夢だ」
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