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平安遥か(W)千年の都へ 作者:ゲン ヒデ

第11回   11
                七夕の夜の白壁邸
 毎年、七夕の夜は、笹を立てて飾り付けをしていた白壁王邸では、今年は帝の不調により、七夕祭を遠慮した。

 ただ1人、山部王、庭で空を眺めている。
 そーと、後ろから近づく人影がある。
 「山部さま、どうなされました。妾は空の上には居りませんわ。今降りてきましたわ」
 女姓の声を真似ているが、山部、すぐに誰だか気づき、
「父上、下手な悪戯ですよ」笑う。
「何だ、気づいたか」
「分かりますよ」
 
 父も空を見上げ
「どうだ、山部。まだ、次の嫁を貰う気になれんのか。もう33歳だぞ。亡き妻も許してくれよう」
「何だか、次を貰っても、また死なれる様な気がして…」
「人の運命は、明日のことさえ分からぬ。毎日、毎日、勤め上げるだけだ。運不運は天に任せろ」
 言い終え、何やら織女星に向かって呟いている。

「父上、お祖母様に何をお願いしましたか」
「うん、家内安全、無病息災、官位安泰」
「はは、お祖母様は、お宮の神様ですか。」
「わしにとっては、守護神だ。大納言か、よくここまで出世できたと思う。だが、これからはそうは行くまい。次期帝は、今の帝と違い、贔屓はせぬだろう」
「そう言えば、左大臣邸に、本流の皇族等が集まったそうですよ」
「不平不満が起こらぬように、根回しをしたのだろう。傍系のわしらは、お呼びでないということだろうなあ」
「次の帝は、誰でしょう」
「陛下は、文室浄三を1番優遇していたから、彼を指名するのではないか」
「しかし、相当の年寄りですよ」
「すぐに長男に譲位するさ」
「父上を皇嗣になどと、陛下が血迷って遺言なさらないでしょうね」
「まさか…、わしを見て、吹き出しそうになっておられるから、それはありえぬ」
「腹踊りのやりすぎですね」
「いいのだ、陛下に笑っていただいた事で、政ごとに何か良い影響があったかもしれぬ」
「そうですかねえ…。ああ、わたしも妻に願いをいますか。家内安全…あれ!わたしは独り身だ。はは」
二人のさわやかな笑いが、庭で響いた
         


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Novel Editor by BS CGI Rental
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