伊達の三千騎は長井勢四千の中央突破を図ったが、すぐ押し戻され事態は時間と共に膠着状態となり、昼過ぎ両陣営とも一歩後方に退いた。
雪上合戦であるがゆえに攻めるよりも待ち構える方が強い。 攻める側は足元が雪で思うように進めないからである。
政宗は胸のうちで舌打ちし、父の軍勢が高畑から南下合流するのを待つ事にした。
数日後、宗遠の二千が合流し、伊達の軍勢は総数で優位には立った。 が、父・宗遠は白兵戦を拒み、親子で軍議をしているうちに数週間が立ってしまった。 「なぜ父君は伊達の好機に闘いを拒むのでございますか!」 政宗は宗遠に詰め寄る。 「政宗、血気にはやるな。もうすぐ長井広房の本隊も合流するであろう。決戦はそれからでも遅くない」 父の進言で、伊達は小松の新田遠江守の陣と対峙するだけとなった。
やがて月が変わり二月となり雪はさらに猛威を振るい始めた。 期待した長井広房の本隊は後方に到着するも、新田遠江守と合流する気配もない。 「兵糧もとぼしくなった。わしは和睦を勧める」 宗遠の進言に政宗は首を横に振ったが当主は宗遠である。
和睦の話は新田遠江守も歓迎し、すぐ成立した。 「残念じゃが。今年も無理だったのー」 宗遠はしんみりと政宗に愚痴をこぼす。
政宗も父の言葉を鵜呑みにした。
しかし百戦錬磨の宗遠のこの40年のあくなき米沢攻略は政宗の想いをはるかに超えていたのを知るよしもなかった。
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