■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

*童話の箱* 作者:藤野麻衣

第3回   大きくたって 〜森の妖精〜
此処は犬が生活するワンワン王国。
今日もワンちゃん達の楽しそうな声が聞こえてきます。
「フランクー! 飛んでいったボールを取ってきてワン!」
「分かったワン」
此処にいるのはゴールデンレトリバーのフランク君です。

「ボール何処だワン〜?」
一緒に遊んでいたグレートピレニーズのゴン太朗君はボール投げが得意。
そんなゴン太朗君が投げたボールは遠くに飛んでいってしまいました。
それだからボール探しのフランクはとっても大変。
もう沢山の時間が過ぎたのに全くボールが見つかりません。
「ボール見つからないワン…もう帰りたいワン…」
弱音を吐いたフランクが周りを見回すと、其処には木ばかり。
そうです! フランクはボールを探すうちに森の中に入ってしまったのです!
「帰り道が分からないワン…」
フランクが森に入るのは初めて。だから帰り道はフランクには分かりません…。
フランクは何だか泣きたくなってしまいました。
「う…うぅ…寂しいワン…」
目には涙が浮かんでいます。

「えぇ〜ん。うわぁああぁあん!!」
「駄目だよ。雄のワンちゃんが泣いちゃ」
フランクが悲しんでいると、後ろから誰か声をかけてきました。
「あなたは誰ワン…?」
「ボクはこの森の妖精だよ。今から帰り道を教えてあげる。だからもう恐くないよ」
とても優しい声。でも姿は見えません。
「森の妖精さん。何処にいるワン?」
「ボクは木の枝にいるよ。きっと君には小さくて見えないんだ」
目を凝らしても、森の妖精は見えません。
でも、木はサワサワと優しい音をたてて揺れています。
フランクは心強くなりました。
「じゃあ行こうか」
「ワン!」
森の妖精の姿は見えませんが、木が音をたててフランクを出口へと案内してくれます。

何時間歩いたでしょうか。周りはもう真っ暗です。
「此処が森の出口だよ」
フランクが顔をあげると其処には街の明かりが見えます。
「妖精さん有難うだワン!」
しかし木を見上げると…さっきまで揺れていたはずの木が何時の間にか動かなくなっています。
「妖精さん…?」
「フランクー!」
その時、ごん太郎君の声が聞こえてきました。
「フランク。ごめんな」
「全然、大丈夫だったワン!だって…」
「だって…?」
「内緒だワン!」
フランクは静かな森を見上げてそう言いました。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections