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Link 〜過去の住む家〜 作者:藤野麻衣

第9回   #Nightmare 7# 悲しみの源
記憶の中の妹は、俺を「お兄ちゃん」とは呼ばなかった。「兄さん」だった。
髪はブロンドではなく、茶色。
「ごめんな。俺、お前のお兄ちゃんじゃない」
彼女の表情が崩れてくる。雰囲気も、表情も、哀しみに包まれていた。
「何でそんな事言うの…? お兄ちゃん…」
「お兄ちゃんじゃない」
キッパリと言い切った俺の手を、スミレが軽く引っ張る。
スミレの「それ」は警告を表していた。

「酷い…」

彼女のその言葉と共に、天井からシャンデリアが降ってくる。
間一髪でかわした俺に、スミレが大声で呼びかけた。
「逃げるよ!」
「逃げてどうなる!? どうせ未だこの家からは出られない! スミレ、何とかできないのか!?」
「私は天使じゃない! 元悪魔≠セ!」
スミレに手を引っ張られ、一先ず逃げるが、それでも納得いかなかった。
「元の元を返せば、スミレ、お前天使だろう!? 祓い方くらい知ってたって…!」
「んなもんとうの昔に忘れましたよ!」
逃げても逃げても彼女は追ってくる。
いつまでも逃げてるわけにはいかなかった。というより逃げられなかった。
どんなに恐ろしい幽霊が住んでいようが、此処は「家の中」だ。
「げ…アラン…追い詰められた…」
走りきって逃げ込んだ先は窓一つ無い部屋。狭すぎる扉。
その部屋の中で彼女はまた、実体を現した。
「お兄ちゃん。お兄ちゃん」
手を差し出して、彼女はゆっくり、だけど確実に俺達の方へ近づいてくる。
一歩、一歩、また一歩…。
「違う! アランは貴女のお兄ちゃんじゃないっ!!」
スミレが必死で彼女を制しようとしていた。
彼女は一瞬、立ち止まってスミレを見る。
「この人のせい?」
「え…」
「お兄ちゃんが来れなかったの、この人のせい?」
スミレを見つめながら彼女は言う。
「違う」
俺は咄嗟にそう言った。だけど。彼女は構わず言葉を続ける。
「この人のせい。だから私、独りぼっち。あなた、いらない」
その時の彼女の顔は、哀しみと憎しみで溢れていた。

 ガシャンっ

そして一斉に壁にかけられていた絵の額縁が外れ、ガラスの部分が浮く。
嫌な予感。
あのガラスを浴びたら、どうなるか想像したくない。
狙うのは…。
「スミレ……っっっ!!」
逃げるとか、避けるとか、そういう事を考える前に、体は動いてた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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