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Link 〜過去の住む家〜 作者:藤野麻衣

第8回   #Nightmare 6# 思い出の鍵

「お兄ちゃん」

ただ、呆然としている俺を見て、彼女はもう一度言った。
「違う…アランは貴女のお兄さんじゃない…」
スミレが代わりに言うが、彼女はそれでも俺から目を離そうとしない。
「お兄ちゃん。だもん。だって、彼、妹がいるもん。それが私だよ」
俺は一瞬、その場に凍りついた。妻のスミレさえ知らない事を、彼女は…知っている。
「アラン…妹、居たの?」
スミレは俺にそう聞いた。
俺は黙って頷く。スミレの目を見ることが出来なかった。
兄妹がいる事を、実は一度も言ったことは無い。
でも別にワザと言わなかった訳ではなく、ただ、「言えなかった」。
「ごめん。実は兄さんもいて……だけど…2人とも死んでるからさ…多分」
森に入った後、はぐれた兄と妹に2度と出会うことは無かった。
そう……今まで。ずっと。
俺は、シルヴィア族という部族の数少ない生き残りだった。
シルヴィア族にはある特殊能力があった。
それは……「人の体を操る」能力。
俺達は一度もその能力を悪用したことなんて無かった。
だけど。
それが、人間が俺達を排除したいと思う大きな原因となった。
いつ力を悪用するか分からない。敵に回るはずがないとは言い切れない。
ようするに、「目障り」だったんだろう。
「アラン…大丈夫…?」
「お兄ちゃん」
スミレの声を掻き消すように、どんどん彼女の声は大きくなっていく。
「お兄ちゃん」
彼女が俺の妹…? なら如何してこんな所にいる…?
死んででもこの物質界に依存するような奴だっただろうか?
「お兄ちゃん。私だよ。貴方の妹だよ」
スミレが、握っている手の力を強くしたのを感じた。
少し汗ばんでいる。
スミレは今、何も言わず、ただじっとしていた。
『父親が過去に、感情に飲まれて良いと思ってるの!!?』
頭の中で、先ほどの言葉を繰り返す。
「お兄ちゃん!」
目を閉じて、自分の記憶の中へと入り込む。
心の奥に閉まった、血の繋がった家族の事を思い出す。
久しぶりに、記憶の中にある妹の顔を見た。
「違う」
思わず、声を出した。
「お兄ちゃん?」
「お前は俺の妹じゃない。妹は俺に似てガサツで、スカートなんてはいた事が無かった」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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