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Link 〜過去の住む家〜 作者:藤野麻衣

第7回   #Nightmare 5# 見つめる彼女
「スミレ…?」
「アラン、しっかりしなさいよっ。アンタ、会社の社長でしょ!? 会社、大きくするって言ってたじゃん! それに……あんた父親なんだからねっ!? 父親が過去に、感情に飲まれてて良いと思ってるのっ!!?」
体に、感覚が戻ってきた。
スミレに殴られた頬がヒリヒリと痛む。
未だ、スミレは俺の手を握ったままでいた。
「ごめん…俺…過去を見てた」
まだ、ボーっとする頭を、空いた片手で支えながら言った。
「「過去を見てた」?」
彼女がそう呟くのが聞こえた。
先程見たことをスミレに伝えなくては…。
俺は、彼女の表情を見ようと顔を上げた。
だけど、俺の目を奪ったのはスミレの表情では無かった。

誰かが…女が…居る。

この広間は吹き抜けになっていた。
階段を上ると、広間の壁沿いに廊下があり、この広間を見下ろせるようになっていた。
そして、その階段の中間地点に「彼女」は居た。
ブロンドの少しウェーブがかった美しい髪は腰まで伸びていた。
ふんわりとしたワンピースを着て、微笑みながらこちらを見ている。
年齢は…10代…前半くらいだろうか?
見た瞬間、俺は動きが止まった。
今まで何も見えない。何も感じなかったのに。ハッキリと分かったから。
彼女はこの世に生きているものでは無い…と。
彼女からは何も感じ取れなかった。…生きているオーラというものが。
「アラン…? どうした…?」
不審そうなスミレの視線を、頬に感じながら、それでも俺は動けなかった。
「彼女」は微笑んでいた。そう、俺を見つめながら。
そして、スミレが何かに気付いたように急に後ろを振り返る。
「貴女は…!」
警戒心を剥き出しにしたスミレを無視し、彼女はまだ微笑み続けている。
俺から、一時も目を離すことなく。
「お前は…一体…」
ようやく搾り出した自分の声。
だけど最後まで言えなくて、途中で止まってしまった。
彼女の美しさの背後にある、大きな哀しみが俺に伝わってきて。
その哀しみが、俺が感じた事のあるものと似ていて。
無性に恐ろしくなった。

「お兄ちゃん」

そんな彼女の口から発せられたのは、予想外の言葉だった―――……。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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