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Link 〜過去の住む家〜 作者:藤野麻衣

第5回   #Nightmare 3# 過去の目的

「まるで…過去、そのまま時間が止まっていたような?」

そっと呟くように言いながら、スミレが俺に不安そうな目を向ける。
「「過去」で時間が止まってるって言うのか? どーして…」
「それは分からない。だけど…それなら、必要以上に私達を追いかけてくる理由が…」

  ガシャーンッッ

俺達以外いないこの部屋で。ビンが割れる音がした。
「アラン! 絶対に私の手を離しちゃ駄目だよ!」
深い深い闇の奥を見てきた彼女の頭には、どんな答えが出ているのだろうか。
どうして、俺の手を握ったまま離そうとしないのか。
再び、俺の手を引いて彼女は走り出す。
守られなければいけないのは、俺の方じゃないのに。
「どーしてだよ! 何時もは俺を拒絶するのに。どーして…」
「どんな今があっても、必ず過去は存在する! 私の過去は闇に染まってた! 今更、私に憑こうなんて奴、気が知れない!」
「じゃあ…」
吹き抜けになった、恐ろしく美しい広間の中で、俺は彼女を引き止めた。

「あいつの目的は…俺?」

彼女は否定しようとしない。
「……………………俺に何の価値がある?」
嫌な予感がする。スミレは俺と目を合わそうとしない。
だけど、どうしても聞きたかった。
俺の奥にある、あいつが求めるべきものが何なのかを。
空いたもう片方の手で、彼女の方に手を伸ばす。
「スミレ…お願いだ。教えてくれ。どうしてもって言うなら…」
「分かったよ。アラン。全部話すから。そうやって脅そうなんてことしないで」
諦めたような表情で、彼女は話し出す。俺は手を引っ込めた。
「多分…だけど、あいつ等の目的は、アラン、あんたの過去にある。どんなに今は幸せでも、アランには消えない、消せない過去がある。どれ程足掻いたってそれは光に変える事は出来ない。そうでしょう?」
目的は俺の過去? 
「なんで…俺の過去を求めてるんだ…?」
「分からない。だけど…この家は「過去」に執着している。目的物がないのに、あの霊が襲ってくるのは考えられないし…。考えられるのはそれしか…」
確かに俺には消せない過去の闇がある。
だけど……俺は頑張ってきた。どんなに辛くとも、過去に縛られずに生きようと。
そして此処まで乗り越えてきたんだ。
「スミレ…俺…」
何と言えば良いのか分からなかった。
支えるべき家族がいるのに。守らなければいけない家族がいるのに。
なのに…。

「アランっっっ!!」

スミレの悲鳴のような声が聞こえた。
その瞬間。
俺の体は激痛に包まれた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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