それは、まだ会社が小さかった頃の話。 成長してきた子供の事を考えて、新居を探してた。 まだ、その頃は「暇」ってものがあったから、奥さんと一緒に。
そして、あの不思議な家に出会った。
現在俺は、大手機械メーカー ジーニアス社の初代社長。
「社長。どうしたんですか? 何か機嫌良さそうですね」 「いや、ちょっと昔の事を思い出してね。懐かしんでた」 「珍しいですね。社長。昔の事を思い出すなんて。そんなに良い思い出なんですか?」 「いや、良いというより最悪かな。だけど、ただの最悪とは違う感じ。俺、言ってる事滅茶苦茶だな」
そう、どんなに忙しくたって忘れることのない。 あの日の不思議な出来事。 美しくて、だけど、恐ろしく哀しくて。 何度も何度も得体の知れない大きな感情に飲み込まれそうになった。 そう、俺の場合は特に。 もし、あの時お互い手を離していたら…と考えると今でもぞっとする。
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